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熱気球を正確に操縦するために欠かせない技術とは?

大きなバルーンの中の空気を熱することで浮上し、風の力を活用して推進する「熱気球」。観光地での体験ツアーといった印象が強いですが、スポーツ競技として大会も開催されています。熱気球を操作してどれだけ目的地(ゴール)に近づくことができるかを競うもので、日本国内で約2,000名のバルーン競技者が存在し、国際大会で日本人が優勝経験を持つ競技でもあります。

いかに目標近くにマーカーを落とすかの競技

熱気球競技は、レースとして目的地へ到着する順位を競う場合もありますが、多くの競技では熱気球を操縦して、どれだけゴールに近づくことができるかを競います。ゴール地点に空中から「マーカー(小さな砂袋)」を落とし、そのマーカーとゴールとの距離を測って、近い順に順位が決まります。

熱気球の大きさは、最も一般的な3~4人乗りで、高さ約20m、直径約15m程度となります。各部を分類すると、球皮、バーナー、バスケットの3つの部分に分けられ、そのほかに操縦に必要なロープやパネルなどが存在します。

バスケットに乗り込んだ競技者がターゲットにマーカーを落とす際のルールが「タスク」と呼ばれます。「タスク」は20種類もあり、代表的なものとしては下記が挙げられます。

PDG:競技者は離陸前に自分で選択したゴールに向かってマーカーを投下する
JDG:競技者は競技本部が決めたターゲットにマーカーを投下する
FIN:競技者は自分で離陸地を探し、ゴールもしくはターゲットにマーカーを投下する

高度を調整して風に乗ることで操縦する

それでは熱気球は、どのようにして目的地を目指して操縦するのでしょうか。熱気球には、飛行機のようにエンジンやプロペラ、翼などはなく、推進する機能や方向を変える機能を備えていません。熱気球の操縦士は、高度によって異なる風の吹く向きや強さを読んで、熱気球の高度を調整することで、進みたい方向の風に乗るのです。バーナーでバルーン内の空気を熱すことで上昇し、熱せられた空気をバルーンから逃がすことで、高度を下げることができます。高度を調整することで操縦しています。

周囲の状況を知ることが必要になるため、熱気球には高度計、昇降計、球被温度計、GPSなど、さまざまな計器が搭載されます。
「高度計」は現在の飛行高度を示し、「昇降計」は気球が上昇しているか下降しているか、またその移動速度を表示します。「球被温度計」は気球の上部に付けられたセンサで、バルーンの温度を測定します。「GPS」は、人口衛星からの電波を受信して緯度・経度を測定し、気球の現在位置を表示します。

これらの計器の中でも、適切な風に乗るために重要な機材が高度計です。そして、高度計の主要な部品が「気圧センサ」です。高度に応じて変化する気圧を測定することで、気球の正確な高度を算出しています。

気圧センサの進化

高度で変化する気圧を測定できる「気圧センサ」ですが、その歴史は古く、1643年にイタリアの物理学者であるトリチェリによって、ガラス管に水銀を入れた水銀気圧計が、気圧センサの起源であるといわれています。ちなみに現在も使用される圧力の単位であるトル(Torr)は、トリチェリの名前にちなんだものです。

気圧計が発明されたことで、大気の圧力が日々変化していることが分かるようになりました。晴天時には気圧が上がり、雨天時には気圧が下がるなど、天気と気圧が相関していることも知られるようになり、大気圧の測定が天気予報に生かされるようになったのです。ヨーロッパから太平洋やインド洋への航海が盛んであった当時、航海時に荒天を予測して転覆などの危機を避けるため、船乗りにとって気圧計は欠かせない道具となっていきました。

ピエゾ抵抗効果を利用した小型圧力センサ

現在、気圧センサとして最も広く使われているのは、ピエゾ抵抗効果を利用した半導体圧力センサです。ある種の半導体などに圧力を加えると、電気抵抗が変化する現象を利用したもので、ピエゾとは“押す・圧縮する”という意味のギリシア語です。

スマートフォンや腕時計に搭載される高度計や、水深を表示するダイバーズウォッチなどに使われている圧力センサの多くは、このピエゾ抵抗型です。従来型の圧力センサと大きく異なるのは、ICなどと同様にウェハ上で多数のセンサ素子を形成してチップ化されること。その製造法とセンサ原理を簡単にご紹介します。

まず、ガラス基板の上にエッチングで小さな空洞を設けたシリコン層を重ねます。この空洞が、気圧の変化によって膨らんだりしぼんだりするダイアフラムとしての役割を担います。次に空洞の屋根部にあたる薄いシリコン面に、ピエゾ抵抗部(歪(ひずみ)ゲージ、ストレインゲージ)を形成します。その工法としてはシリコン層に不純物イオンを注入(拡散)する半導体プロセス技術が主流なので、ピエゾ抵抗型の圧力センサは拡散抵抗型とも呼ばれます。気圧変化などにより空洞部(ダイアフラム)の上の薄いシリコン面がたわむと、歪ゲージのピエゾ抵抗効果により電気抵抗値が変化します。これを電子回路で処理・増幅して圧力を表示するというしくみです。

さまざまな製品に搭載される圧力センサ

ピエゾ抵抗型の圧力センサは、スマートフォンやウェアラブルデバイスだけでなく、自動車やFA機器ほか、家電機器にも応用されています。たとえば、エアコンや掃除機では風圧をコントロールして、省エネ・効率的な運転を実現します。また、炊飯ジャーでもきめ細かな圧力検知により、ふっくらとおいしいご飯を炊き上げるのに活躍しています。また、大空を自由に飛行するドローンにも、高度検知に気圧センサが欠かせません。気圧センサは、気球の正確な操作だけでなく、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しているのです。

近年注目を集めているMEMS(メムス)は、半導体製造技術を応用し、基板にセンサや電子回路、そしてアクチュエータなどを集積する技術。TDKでは先進のMEMS気圧センサほか、幅広い用途に応用可能な各種の圧力センサを豊富にラインアップしています。

TDKの気圧センサ「SmartPressure™」シリーズ

革新的な「静電容量型MEMSアーキテクチャ」を採用し、他社製品と比べ、低消費電力、低ノイズが特長の気圧センサ。感度・精度もきわめて高く、階段一段の高さにも満たないわずか5cmの高低差を検知できます。スマートフォン、タブレット、ウェアラブル、ドローンなど、各種モバイルデバイスに採用されています。

TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです

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