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アメリカンフットボールの科学:歴史から最新技術まで

アメリカンフットボールの歴史
アメリカンフットボールは、150年以上の歴史があることをご存じでしょうか。白熱する試合展開と屈強な選手たちのぶつかり合いは、時代を超えて人々を魅了し続けています。アメリカンフットボールは、一体どのように進化を遂げてきたのでしょうか。
草創期 (1869年~1890年代)
1869年11月、ラトガーズ大学とプリンストン大学の間で行われた試合が、アメリカにおけるフットボールの起源とされています。この頃は独自ルールでフットボールの試合が行われていました。
1892年、選手への報酬が認められ、プロフットボールが誕生。各地でチームが結成され、リーグ戦が行われるようになります。しかし、チーム間の年俸競争や選手の引き抜きなどが問題となり、統一ルールの下で運営されるリーグの必要性が高まりました。
NFLの誕生 (1900年~1920年代)
1920年、NFL(National Football League)の前身であるAPFA(American Professional Football Association)が発足。これが、全米規模の組織化されたプロフットボールリーグの誕生であり、現在のNFL隆盛の礎となりました。
NFLの成長と革新 (1930年代~1960年代)
1939年には初のテレビ中継が実現し、全米にフットボールの魅力が発信されるように。
NFLの成長と革新 (1930年代~1960年代)
1939年には初のテレビ中継が実現し、全米にフットボールの魅力が発信されるように。
1960年にはAFL(American Football League)が設立されます。
1967年、『AFL-NFLワールドチャンピオンシップゲーム』(後にスーパーボウルと呼ばれる)が初めて開催され、アメリカ最大のスポーツイベントとして、現在まで続く歴史が幕を開けました。
スーパーボウル時代の到来とNFLの隆盛 (1970年代~1990年代)
1970年、NFLとAFLは統合され、NFC(National Football Conference)とAFC(American Football Conference)の2カンファレンス制へと移行。新たな時代の幕開けとなりました。
この時代は、テレビ中継の普及も相まって、NFL人気が爆発的に高まった時代と言えるでしょう。
さらなる進化 (2000年代~)
2000年代に入ると、NFLの観客動員記録が3年連続で更新されました。
NFLの試合をインターネットでライブストリーミング配信するサービス「NFL Game Pass」も開始し、新たなファン層の獲得に成功しました。
そして、アメリカンフットボールは、常に進化を続けています。データ分析を用いた戦術の高度化、最新技術を用いたトレーニング方法の導入など、その進化は留まることを知りません。
これからも、アメリカンフットボールは、世代を超えて愛されるスポーツとして、新たな歴史を紡いでいくことでしょう。
パスコースとキックの種類
アメリカンフットボールは、パワーとスピードがぶつかり合う迫力もさることながら、緻密な戦略と駆け引きが勝敗を分ける頭脳戦でもあります。多彩なパスコースとキックの種類が存在し、それぞれに戦略的な役割があるのです。
パスプレーの基本と種類
パスプレーは、QB(クォーターバック)からWR(ワイドレシーバー)やRB(ランニングバック)などへボールを投げて攻撃するプレーです。
パスプレー成功の鍵を握るのが、レシーバーが走るパスコースです。ショートパス、ミドルパス、ロングパスと距離による分類はもちろんのこと、レシーバーが走るルートによって様々な種類が存在します。
主なパスコース例
• ショートパス
• ヒッチ(Hitch): 一定距離を直進後、クイックに反転してボールを受ける。ディフェンスの虚を突く、短いパスで攻撃のリズムを作る際に有効。
• クイックアウト(Quick Out): 一定距離を直進後、サイドライン際へ斜めに走り、アウトサイド方向へパスを受ける。
• スラント(Slant): 一定距離を直進後、約45度の角度で内側へ切り込みパスを受ける。ディフェンスのラインバッカーの裏を狙う際に有効。
• ミドルパス
• カムバック(Come Back): 一定距離を直進後、後方へ反転してボールを受ける。相手ディフェンスを揺さぶり、フリーの状態を作り出す。
• カール(Curl): 一定距離を直進後、緩やかに減速しながら内側へカーブを描くように走り、パスを受ける。
• ロングパス
• イン(In): 一定距離を直進後、鋭角に内側へ切り込みパスを受ける。
• アウト(Out): 一定距離を直進後、鋭角に外側へ切り込みパスを受ける。
• ポスト(Post): 一定距離を直進後、約45度の角度で内側へ斜めに走りパスを受ける。
• コーナー(Corner): 一定距離を直進後、約45度の角度で外側へ斜めに走りパスを受ける。
• ストレート(Straight)/ゴー(Go): フィールドエンドに向かって直進し、ロングパスを受ける。
キックの種類
キックは、攻撃権を相手に渡す代わりに、陣地を有利に進めたり、直接得点を目指したりするプレーです。状況判断と正確性が求められるキックは、試合の流れを大きく左右する重要な要素となります。
• キックオフ(Kick Off): 試合開始時や得点後に、自陣から相手陣地へボールを蹴り込む。
• フィールドゴール(Field Goal/FG): 攻撃中に、地面に置いたボールを蹴り、ゴールポストの間かつクロスバーの上を通過させれば得点となる。
• パント(Punt): 4回の攻撃で10ヤード進めなかった場合、攻撃権を相手に渡す前に、自陣から相手陣地へボールを蹴り込み、陣地をなるべく遠くに押しやる。
各プレーの戦略的な役割と選択基準
パスプレーとキックは、それぞれ異なる目的や特性を持つため、状況に応じて使い分けることが重要です。
• パスプレーを選択する場合
• 得点が必要な場面
• 時間を節約したい場面
• 相手のディフェンスの隙を突きたい場面
• キックを選択する場合
• 確実に陣地を稼ぎたい場面
• 得点差を広げたい、または守りたい場面
• リスクを避けたい場面
これらの要素を考慮し、監督やコーチ陣は、選手との連携、相手の戦力分析などを基に、勝利へ繋がる最適な戦略を練り上げるのです。
アメリカンフットボールのボール規格(サイズと重さ)
アメリカンフットボール、その最大の特徴とも言えるのが、独特な楕円形のボールです。一見、ラグビーボールと似ているようにも見えますが、アメリカンフットボールには独自の規格があります。
サイズ
アメリカンフットボールのサイズは、厳密に定められています。
• 直径: 27.6cm~29.1cm
• 長辺の外周: 70.5cm~72.4cm
• 短辺の外周: 52.7cm~54.0cm
• 重さ: 397g~425g
• 空気圧: 703~949g/㎠ (10~13.5ポンド/平方インチ)
素材
アメリカンフットボールの素材は、主に天然皮革とゴム製の2種類があります。
• 天然皮革: 社会人、大学、高校の公式試合で主に使用されます。
• ゴム製: 中学生以下のジュニアアメリカンフットや、練習用として使用されることが多いです。天然皮革に比べて安価で、雨天時でも滑りにくいというメリットがあります。また、高校生以上の公式試合でも、レフリーの承認があれば使用が認められています。
プロとアマチュアの違い
プロとアマチュアでは、使用されるボールに若干の違いが見られます。
プロのNFLでは、上記のサイズが使用され、メーカーはウィルソン社に限定されます。
一方、大学のNCAA(全米大学体育協会)では、メーカーの指定はありません。
スローイングとキックのコツ
アメリカンフットボールは、パワーとスピードだけでなく、正確なスローイングとキックが勝利を左右する、戦略性の高いスポーツです。
正確で力強いパスを決めるためには、正しいグリップとリリースポイントを身につけることが欠かせません。
まず、ボールをしっかりとホールドし、中指、薬指、親指で支えます。手のひらは少し浮かせることで、リリース時にスムーズな回転が得られます。
リリースするポイントも重要です。ボールを利き腕と反対側の足のつま先を結んだ延長線上あたりでリリースすると、全身の力が伝わりやすくなります。
リリースの瞬間に、人差し指でボールを押し出すようにすると、スパイラル回転が生まれます。
楕円形のボールを蹴るキックも技術が必要です。
力強いキックを決めるには、軸足をボールの真横に置き、蹴る足の甲(厳密には内側の甲)でボールを捉えます。
ボールを蹴った後は、足を振り上げてしっかりとフォロースルーすることで、ボールが狙った方向に飛びやすくなります。

フットボールとジャイロ効果
ジャイロ効果とは、回転する物体、例えばコマや自転車の車輪などが、外からの力に対して回転軸を一定方向に保とうとする性質のことです。
回転するほど、この力は強くなり、安定性を増していきます。フットボールで言えば、回転軸はボールが飛んでいく方向に対して水平な軸となり、この軸を中心にボールは回転します。
ジャイロ効果によって、ボールは、空気抵抗の影響を受けにくく、安定した軌道を描くことができます。
パスプレーにおいては狙ったポイントへボールを正確に届けることができ、キックオフにおいてはボールを遠くに飛ばし、敵陣深くへ押し込むことができるのです。
アメリカンフットボールの先端技術:選手とファンの体験を向上させる

スポーツにおける技術の進歩とウェアラブル技術は、特にプレーヤーの安全性とパフォーマンス分析の分野で、アメリカンフットボールを変革しています。これには、ヘルメット、パッド、およびボール自体のセンサーが含まれます。
● ヘルメットセンサーは、衝突の場合の衝撃の位置と強度に関する貴重なデータを提供できるほか、脳しんとうを検出できるものもあります。このデータは、さまざまな頭部外傷を追跡するセンサーを備えたマウスガードによって提供される情報で補強または相互参照できます。
● RFIDタグなどのパッドセンサーは、ショルダーパッド(および肩甲骨の間)に取り付けられ、プレー中のプレーヤーの速度、位置、重心を追跡し、安全性とパフォーマンスに役立つデータを提供します。
● ウェアラブルやその他のセンサーは、コーチや医療専門家に豊富な生体力学と生理学的データを提供し、パフォーマンスを追跡して怪我を防ぎます。
● ボールセンサーは、プレーヤーがボールを見えないようにしている場合においても、位置、加速度、衝撃力を監視し、正確な情報で審判を支援します。
高度なセンサーとウェアラブルにより、スポーツはアスリートにとってより安全で、ファンにとってより魅力的になりつつあります。また、コーチは、リアルタイムデータにより、選手の交代やゲームの流れを変えるための戦略などの決定を下すことができ、長期的な怪我を防ぐことができます。
SmartMotion®:精密なモーショントラッキングによるパフォーマンスの向上
アメリカンフットボールをさらに変革する画期的な技術の一つが、TDKグループ会社のInvenSense社製のSmartMotion®です。同社は、モーションセンシングソリューションのパイオニアであり、高精度で最小限のリソース消費(電力)で正確なモーション関連データを取得します。SmartMotion®は、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)慣性計測ユニット(IMU)のシリーズです。
MEMSは、機械データ(動き、圧力、速度など)を電気信号に変換し、ウェーハレベルで記録および送信できるシステムの総称です。IMUとは、特定の身体の動きを3つの物理的次元で観察する測定システムを指します。実際には、ほとんどのIMUは加速度と角速度の2つを計算し、その作業に関連するセンサー(加速度計とジャイロスコープ)を備えています。
これは、ほとんどの6軸SmartMotion®システムも行っていることです。6軸は、3つの軸(X、Y、Z)を指し、それぞれが加速度と角速度を表します。また、地球の磁場を追跡して、基準方向(地球の表面など)に対する物体の向きをより正確に把握する9軸システムもあります。
SmartMotion®がアメリカンフットボールのパフォーマンスを向上させる方法

SmartMotion®システムは、ウェアラブルと一緒に、またはウェアラブルとして使用でき、アスリートの動きに関する関連データを送信します。トレーニングと実際のゲームの両方で使用して、キャッチの検出やキックがどれだけうまく実行されたかなどの洞察を得ることができます。システムを手首に装着すると、ボールの力/速度とボールの回転角度に関する正確な情報を提供し、そのスローイングがどれだけうまく機能したかを測定できます。同様に、成功したキックと成功しなかったキック(オーバーシュートまたはアンダーシュート)の間の足の角度の正確な違いなど、カメラが提供できるよりも多くのキックモーションに関するデータを提供できます。さまざまな条件でのレシーバーのキャッチ角度、ラン中やタックルを回避した直後の加速、減速、カット角度を追跡するのに役立ちます。
これらのシステムは、コーチ、プレーヤー、およびその他の関係者がパフォーマンスと健康についてよりよい決定を下すことを可能にする、他の有用なデータも提供できます。
結論
基本的なセンサーからSmartMotion®が開発したような高度なシステムまで、さまざまなテクノロジーがアメリカンフットボールを再構築しています。テクノロジーは、アメリカンフットボールのトレーニングの方法、さまざまなプレーの性質、個々のプレーヤーの戦術を根本的に変えることができます。適切なテクノロジーにより、コーチは最高のアスリートが達成できることの限界を押し広げ、競争をより激しくし、より魅力的なものにすることができるかもしれません。
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