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フィギュアスケートのジャンプ種類と難易度を分かりやすく解説
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銀盤に繰り広げられる目くるめく演技。フィギュアスケートはまさにウインタースポーツの華。ISU(国際スケート連盟)主催の世界選手権大会およびグランプリシリーズは、オリンピックとともに、フィギュアスケートの3大世界大会となっています。
音楽に合わせた華麗な演技は見ているだけでも楽しいものですが、さまざまなジャンプの種類を知っておくと観戦の面白さは倍増します。また、身体を独楽(コマ)のように高速回転させるスピンも美しいものです。フィギュアスケートの演技には、スポーツ科学や力学がたくみに応用されています。
フィギュアスケートのジャンプ種類は6種類
靴と鉄製のブレード(刃)を一体化させたスケート靴が考案されたのはオランダです。オランダでは国内に張り巡らされた運河が冬には凍りつき、そのまま天然のスケートリンクとなります。古くは冬の交通手段として用いられ、やがて速さを競うスピードスケートや、滑りの優美さを競うフィギュアスケートが生まれ、17世紀頃から各国に広まりました。
ステップ、ジャンプ、スピンをフィギュアスケートの要素といい、競技に出場する選手は自分の選んだ音楽に合わせ、これらの要素をバランスよく組み合わせて演技します。採点の比重が大きいため、選手がとくに力を入れるのはジャンプです。ISUにより公認されて採点対象となるジャンプには、以下のような6つの種類があり、難易度や空中での回転数などによって採点されます
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ジャンプの種類を見分けるコツは、まず前向き姿勢からのジャンプか、後ろ向き姿勢からのジャンプかに注目すること。前向き姿勢から跳ぶのは、最も難度の高いアクセルです。前向き姿勢からジャンプし、後ろ向き姿勢で着氷するため、ダブルアクセルは2回転半、トリプルアクセルは3回転半のジャンプとなります。
フィギュアスケート靴はブレードのトウ (つま先)にギザギザがついています。アクセルやループ、サルコウは、トゥを使わずエッジで踏み切るためエッジジャンプと呼ばれます。一方、踏み切るときに、トゥを使ってジャンプするのは、ルッツやフリップ、トゥループです。
2014年のソチオリンピック以降、フィギュアスケートの技術は急速に進歩し、かつては一部の選手しかできなかった4回転ジャンプが当たり前のように演技に取り入れられるようになりました。2022年には、ISU公式競技会における世界初のクワッドアクセル(4回転半アクセル)も、アメリカのイリア・マリニン選手によって達成されました。
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図はトリプル(3回転)サルコウ。後ろ向きからエッジを使って踏み切る。両足が「ハ」の字になるのが特徴。
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図はトリプルアクセル。前向きから踏み切るので半回転多くなり、トリプルアクセルは3回転半の高難度のジャンプ。唯一、前向きから踏み切る。サッカーボールを蹴るように右足を振り上げて跳び上がる。
角運動量保存則を利用したスピンのコントロール
ジャンプとともに ファンを魅了するのは、独楽(コマ)のように高速回転するスピンです。静止状態にあるブロックのような剛体は、いつまでも静止したままですが、フィギュアスケートにおいては静止状態からスピンを始めることもできます。上半身をひねって下半身にその反動の逆転運動をつくり、両腕を大きく水平に振ることでスピンが得られるのです。片脚を伸ばして腰を低くした状態からスピンを開始するとき、伸ばした脚や腕を縮めながら立ち上がると回転速度が増します。これは力学の角運動量の保存則にのっとった運動です。ジャンプ回転においても、目を凝らせば踏み切り直後に腕を縮めて、回転を速めていることがわかるはずです。
角運動量というのは回転する物体のもつ運動エネルギーのことで、慣性モーメントと回転速度である角速度の積で表されます。外部から力が加わらないかぎり、角運動量は一定であるというのが角運動量の保存則です。このため、伸ばした脚や腕を回転軸のほうへ寄せると慣性モーメントは小さくなりますが、運動量の保存則により、角速度のほうは大きくなって回転は速まります。スピン状態から演技を終えるとき、両手や脚を広げたポーズをとるのは、逆に慣性モーメントを大きくして回転を弱めるため。床の上のバレエとちがって、氷上をブレードで滑るスケートは摩擦が極端に小さいからです。フィギュアスケートの美は、力学をたくみに応用した無駄のない身のこなしから生まれてくるのです。
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両手と片脚を伸ばし、腰を低くした状態から身体にひねりを与えてスピンを開始。その後両手を縮め、足をクロスすると慣性モーメントは小さくなるが、角運動量の保存則により、回転速度は増す。
スピントロニクスとHDDヘッド技術
電子は自転運動に似た高速回転をしているため、微細な磁石としての性質をもちます。これを電子のスピンといいます。磁性体の磁化とは電子のスピンの向きが同じ方向にそろう現象です。現代のエレクトロニクスはこの電子のスピンをさまざまに利用するまで進歩を遂げています。これをスピンエレクトロニクスといい、HDDの磁気ヘッド技術はその先端分野のひとつです。
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HDD用再生ヘッドは、従来のGMRヘッドからTMRヘッドが主流となっています。いずれも薄膜プロセス技術によって製造される多層薄膜構造の素子で、磁気メディアからの漏れ磁束によって、フリー層(自由磁化層)の磁化方向の角度が変わると、大きな抵抗変化を示す現象(巨大磁気抵抗効果=GMR効果、トンネル磁気抵抗効果=TMR効果)を利用しています。
HDDヘッド技術において世界をリードしてきたTDKは、垂直記録方式のPMR素子と組み合わせたTMR-PMRヘッドを2005年に実用化。大容量とすぐれたコストパフォーマンスにより、パソコンの記憶装置やHDDプレーヤはじめ、近年はデータセンターのストレージなどにも多用されています。
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ピン層の磁化の向き(スピン方向)は一定。フリー層の磁化の向きは外部磁界に追随し、それに伴い電気抵抗が変化して流れる電流が変化する。
次世代HDD用MAMRヘッド/HAMRヘッド
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データセンターのストレージの主役であるニアラインHDDにおいても、TDKのTMR-PMRヘッドが多用されています。さらにTDKでは、TMR-PMRヘッドの限界を超える次世代のHDD用磁気ヘッドとして、MAMR(マイクロ波アシスト磁気記録)ヘッド やHAMR(熱アシスト磁気記録)ヘッドの開発も進めています。TDKのコアテクノロジーとナノテクノロジーは、スピンエレクトロニクス技術の世界でもその真価を大いに発揮しています。
TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです