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変化球はなぜ曲がる?カーブやスライダーの変化球が曲がる仕組みを理解しよう。

ベースボール(野球)の起源には諸説ありますが、古くイギリスの貴族の遊びであったクリケットから派生したラウンダーズという球技が、18世紀アメリカにもたらされて発達。19世紀には細かなルールも定められ、アメリカの国民的スポーツとなり、広く世界にも普及しました。初のプロ野球リーグであるMLB(メジャーリーグベースボール)の創設は1903年。2006年からは国別の世界一を決めるWBC(ワールドベースボールクラシック)が4年ごとに開催されています。

変化球のしくみは空気力学によって説明される

ベースボールの守備の8割はピッチャーが担うともいわれています。メジャーリーグの平均球速は90マイル(約150km)台ですが、100マイル(約160km)を超える球速も記録されています。とはいえ、球速は速ければよいというわけでもありません。相手の目が慣れてくるとタイミングが合うようになり、ジャストミートされればホームランとなるからです。そこで、速球と変化球とを織り交ぜるのが、打者を幻惑させるためのピッチングの基本となります。
投手が投げる球種はたくさんありますが、ストレート系(直球)、フォークボールやチェンジアップなどの縦変化系(落ちる球)、 シュート、スライダーなど横変化系(曲がる球)に大別されます。ただし、大きく曲がりながら落ちるカーブや、ストレートに見えて打者の手元でわずかに変化するカットボールなどのようなタイプもあり、厳密な分類ではありません。

ボールに回転を与えることにより、さまざまな変化球が生まれる。変化の仕方はボールの縫い目も関係する。

ボール(硬球)コルクやゴムの芯に毛糸を何層にも厚く巻き、ひょうたん形の2枚の皮でくるんで糸で縫い上げる。大きさ・重さは厳密に規定されているばかりでなく、縫い目も108と決められている。

ボールの縫い目も変化球に大きく関係

変化球の球種に大きく関係するのは、ボールの回転です。回転するボールでは、空気の流れが密になる側と、疎になる側ができます。この空気の流れの非対称が圧力差となり、ボールの進行方向をそらす揚力が生まれるのです(ベルヌーイの定理)。しかし、そればかりではありません。変化球にはボール背後にできる空気の乱流も関与します。乱流というのは空気の小さな渦の集まりで、周囲より圧力は低く、投げられたボールにブレーキをかける働きをします。
回転を与えると背後の乱流はボール進行方向からずれるため、カーブやシュートになったりします。こうした曲げる力の作用はマグナス効果と呼ばれます。投手にとってボールの空気抵抗は必ずしもやっかいな存在ではなく、乱流をむしろ積極的に利用しているのです。面白いことにボールに働くマグナス効果は、球速140〜150kmの速球よりも、球速100km前後のほうが大きいのです。カーブボールが大きく曲がりながら落ちるのも、このためです。フォークボールやナックルボールはボールに回転を与えず、押し出すように投げる変化球です。スピードは遅くゆらゆらと揺れながら進み、乱流がブレーキとなり、重力の働きによって打者手前でストンと落ちます。
また、ボールの縫い目も乱流の発生ぐあいを微妙に変えるため、さまざまな変化球やクセ球が生まれます。ツーシームと呼ばれる球種は、ボールの2つの縫い目(シーム)に指をかけて投げることからのネーミングです。
このように、変化球はボールの回転数、回転軸の方向、縫い目の方向、球速などが複雑に絡み合っています。

回転する球体の片側は、空気の流速が速く(流線は密、圧力小)なり、別の片側の空気の流速は遅く(流線は疎、圧力大)なる(ベルヌーイの定理)。この圧力差が揚力となり、ボールの進行方向を曲げる原因の1つとなる。変化球には、ボールの後部に生まれる乱流が大きく関係する。回転するボールでは、乱流の位置は進行方向に対して斜めになる。乱流側は圧力が低いので、ボールの進行方向を曲げる力が生まれる(マグナス効果)。

空気の揚力で浮上を保つHDDの磁気ヘッド

HDDの磁気ヘッド も空気力学や揚力と深い関係があります。磁気ヘッドの記録再生素子は半導体製造に似た高度な薄膜プロセス技術により、ウエハ上に薄膜素子として多数まとめて形成されます。これを切断・加工して1〜2mm角のチップとしたものをスライダといい(図A)、スライダをHGA(ヘッド・ジンバル・アセンブリ)に取り付けたものが製品としての磁気ヘッドです。

記録再生素子はスライダの端に位置し、高速回転するディスク(プラッタ)とわずかな浮上量(スペーシング)を保ちながら読み書きを実行します(図B)。

記録密度の向上とともに、この浮上量は年々狭くなっており、最近の磁気ヘッドでは約10nm(ナノメートル)以下にまでなっています。たとえていえば、これはジャンボジェット機が滑走路上わずか1mm未満の高さで高速飛行することに相当します。重さ数百トンのジャンボジェット機が空を飛べるのも、翼が空気から揚力を得ているからですが、HDDの磁気 ヘッドでも狭い浮上量を保つために空気の揚力が利用されているのです。
スライダの片側が斜めにカットされているのは、ディスク回転に伴う空気の流れをスライダ底面にスムーズに送り込むためです。また、スライダの底面には空力特性を高めるために溝が彫られ、スライダの浮上量の安定化や位置決め精度の向上が図られています(図C)。航空機の翼の役割も兼ねたスライダは、こうしてディスク面スレスレの空中飛行を実現しているのです。

TDKの磁気ヘッド

HDDの高記録密度化に対応した高感度のTMR素子と垂直磁気記録方式のPMR素子を組み合わせたのがTDKの磁気ヘッド。HDDのさらなる小型化・大容量化を実現し、パソコンやHDDレコーダなどのほか、新しい技術を取り入れて容量を増やしながら、データセンターの主力ストレージであるニアラインHDD用磁気ヘッドに使われています。

 

TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです

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