パワーエレクトロニクス・ワールド

第8回 環境にやさしく小型・軽量、UPSはリチウム電池時代

電子レンジや電熱器、掃除機など、多数の電気器具を同時使用してブレーカが落ち、入力中のパソコンのデータが消えてしまった。といった経験のある人は多いはず。落雷や電線事故などにより、突然の停電に見舞われても同様の事態が発生します。オフィスビルや地域全体では、たとえ瞬時の停電でもその影響ははかりしれません。こうしたさまざまな電源トラブルにも、すばやくバックアップして電力供給するのがUPS(無停電電源装置:Uninterruptible Power Supply)です。

容量とバックアップ時間を考慮して機種選定

かたときも休むことのない現代社会にとって、電力は血液のようなものであり、停電は血液補給が途絶えるのと同じ事態。コンピュータによるネットワーク化が進んでいる今日では、社会の神経系統までマヒしてしまいます。UPSは停電などの電源トラブルに対して、充電した大容量バッテリから電力を供給し、パソコン、サーバなどのダウンを防ぐ装置です。
UPSは容量やバックアップ時間、方式、形状などにより各種タイプがあります。ひとくちに自動車といっても、軽・普通・大型乗用車からマイクロバス、大型バスまで、さまざまあるのと同じです。UPSを導入するときは、まずバックアップしたい機器の電源容量や必要なバックアップ時間(30分、60分、2.5時間、3時間など)を考慮しておく必要があります。
およその目安として、ホームシステムでは数10W〜数100W程度。IP電話やテレビドアホンだけがバックアップできればよいというパーソナルユースには、容量50W・バックアップ時間が30分でリチウムイオン電池を利用した軽量・コンパクトなUPSもあります。 SOHOや小規模オフィスなどで、複数のパソコンやサーバネットワークシステムをカバーする場合は、1000W前後からそれ以上というところです。形状には据え置き型ほか、増設にも省スペースで対応できるラックマウント型、キャスターの付いたフロアマウント型などがあります。
大規模オフィス、通信施設、公共施設、金融機関、病院などでは三相200V入力の大型(容量10kVA〜1000kVA)の据付型のUPSが用いられます。多数のバッテリを内蔵するため重量は増し、形状も自動販売機なみに大きくなります。停電がバックアップ時間を超えた場合に備えて、ディーゼルエンジンなどによる非常用発電装置が接続されたりもします。

ユーザの不満を一挙に解消するTDKラムダの“リチウムUPS”

UPSは、整流器(AC/DC変換)、バッテリ(鉛蓄電池、リチウムイオン電池など)、インバータ(DC/AC変換)で構成されます。さまざまな給電方式がありますが、代表的なのは「常時商用方式」 「ラインインタラクティブ方式」 「常時インバータ方式」です。

常時商用方式

常時商用方式は最も簡易な方式です。通常時はコンセントから送られてくる商用交流をそのまま出力しつつ、バッテリには整流器によって変換された直流電力を充電して蓄えておきます。停電などが起きると、切り替えスイッチがONとなって、スタンバイ状態のインバータが作動し、バッテリ電力を交流電力に変換して出力します。電圧波形は矩形波のものが一般的です。スイッチング方式の電源を利用しているパソコンなどでは、商用交流のサイン波(正弦波)である必要がないからです。パーソナルユースの小型UPSなどに用いられます。

ラインインタラクティブ方式

常時商用方式を改良した方式。トランスを用いたAVR(電圧補正回路)によって入力電圧の変動を自動的に補正します。

出力波形は矩形波のものと、商用交流と同じサイン波のものがあります。

常時インバータ方式

上記の2方式では、停電時のスイッチ切り替えに、わずかな時間ながら出力が途切れてしまいます。これを“瞬断”といいます。この瞬断をなくし、商用交流の周波数・波形を途切れなくつないで、バッテリからの電力供給へ切り替えるのが、常時インバータ方式です。整流器によってバッテリ充電しつつ、常時インバータを介した出力が接続機器に送られるため、停電時にも瞬断のない切り替えが実現し、つねに安定した電力を供給します。たえずインバータが稼動しているので、インバータ分の損失がプラスされてUPS全体の消費電力はやや大きくなってしまいますが、バッテリを増設することで、バックアップ時間を容易に延長できるのが特長です。中〜大容量UPSのほとんどがこの方式を採用しています。
UPSのバッテリとしては、従来、鉛蓄電池が使用されてきました。密閉型なので液漏れなどは起きませんが、重く大型なのが欠点。また、鉛は環境に有害な物質です。そこで、近年は小型・軽量で環境にもやさしいリチウムイオン電池が採用されはじめています。価格は鉛蓄電池よりも高めですが、格段に長寿命のためトータルコスト的には安くなります。
新世代のリチウムUPSのリーディングカンパニーを目指し、蓄積技術とノウハウにさらなる磨きをかけているのがTDKラムダ。徹底的な安全対策により、安心して使用できるのもTDKラムダのUPSの特長。大容量・据え置き型のUPSも、これからは、ぐんと軽量・コンパクトで使い勝手にすぐれたものになっていきます。

高品質で高効率なパワーマネジメントにもUPS技術が貢献

停電だけが電源障害ではありません。日常的にもさまざまな原因により商用交流のサイン波に乱れが生じて、接続された電子機器にトラブルを起こします。UPSはこうした電源障害への対策としても、きわめて効果的な装置です。豊富なラインナップを有するTDKラムダのUPSでは、以下のように電源障害を9つにタイプ分けし、保護できる電源障害の数で、UPSの給電方式を分類しています。

レベル3

(1)停電 落雷、自然災害、人為的ミスなどによる電力供給の遮断。

(2)電圧サグ 大型機械などの大容量負荷の電源が入ったときや、商用ラインの故障などで瞬間的に電圧低下する現象。

3)電圧サージ 大容量負荷の電源を切ったり、切り替えたりしたとき、負荷が急激に減少して、瞬間的に商用定格の110%以上の過電圧が発生する現象。

レベル5

(4)電圧低下 他の接続機器により負荷側の容量が大きくなったり、商用入力が異常になったりしたときなどに、入力電圧が低下する現象。

(5)過電圧 エンジンジェネレータなどの発電装置の近くで電源を取りいれていたりすると、入力電圧は常に高い状態で供給されます。

レベル9

(6)商用電源ノイズ 他の接続機器で発生したノイズが、入力ラインを通じて伝達され、電源ノイズとして侵入します。これを防ぐためにUPSにも電源用EMCフィルタが搭載されます。

(7)周波数変動 エンジンジェネレータなどの発電装置が不安定な場合などに発生します。

(8)スイッチングノイズ スイッチのON/OFFなどにより、瞬間的に増大した電圧が入力ラインに印加する現象。通常、スパイクノイズより短い10-9秒レベルのノイズ。

(9)高調波歪み スイッチング電源、可変高速モータ、コピー機、FAXなどの非線形負荷によって発生します。

高レベルほど電源障害に強く、高品質・高信頼性の出力が得られます。停電時に自宅パソコンのダウンを守るためのパーソナルなユースなら、レベル3クラスのコンパクトな機種で十分です。充実したネットワーク管理と拡張性を重視するなら、ラインインタラクティブ方式のレベル5クラスが適しているでしょう。また、複数のパソコンを結ぶLANからサーバ・ネットワークシステムまで、さまざまな要求にも応えられるインテリジェントな電源環境を構築したいなら、常時インバータ方式のレベル9クラスの機種からの選定となります。
太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーの利用が本格化しつつあります。バッテリに蓄えた電力と商用電力とのスムーズで効率的な切り替えといったパワーマネジメントにも、UPSの技術が不可欠。TDKラムダのリチウムUPSは、これからのクリーンエネルギーシステムを力強くサポートします。

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