テクノ雑学

第169回 地デジ化に乗り遅れたあなたのテレビを生き返らせる!〜アナログテレビで地デジを見る方法〜

2011年7月24日正午、いよいよ地上アナログ放送の電波が止まります。実施予定が1年延期された東日本大震災の被災地である岩手県・宮城県・福島県以外の地域では、地デジ非対応のテレビではテレビ放送電波を受信できなくなります。

 しかし、上記3県以外の44都道府県で、6月末時点でも29万世帯が地デジに未対応であるという調査結果を総務省とNHKが発表しています。また、地デジ対応済みといっていてもリビングのテレビだけが対応しており、寝室や子供部屋までは未対応という世帯も多く、地デジに対応していないテレビはもっと多いと推測されます。

 これらのアナログテレビは、7月24日で本当に使えなくなってしまうのでしょうか?今回のテクの雑学では、「アナログテレビでも地デジを見る方法」をご紹介します。

「地デジ化」で何が変わるの?

地上デジタル放送と従来のアナログテレビ放送では、二つの点が異なります。一つは、信号波がアナログからデジタルに変わっていること、もう一つは周波数が異なることです。周波数は、従来多くの局で使用していたVHF帯(1〜12チャンネル)から、UHF帯(13〜62チャンネル)に変更になります。

 したがって、地デジに対応するためには、対応テレビへの買い換えと、アンテナの調整が必要になります。アンテナは、従来VHF帯の電波を受信していた地域では買い換えが必要になります。また、従来UHF帯の電波を受信していた地域でも、向きや感度の調整が必要になる場合もあります。


 ところで、「地デジになると周波数が変わって13〜62チャンネルになる」と聞いて、おやっと思われた方もいるのではないでしょうか。すでに、地デジに対応しているテレビでも、普段テレビを見るときはリモコンで1〜12までの番号を指定しています。これは、テレビの操作用に、テレビ側で地デジの電波の周波数を表す「物理チャンネル」を「リモコン番号」に対応させる変換を行っているのです。

 物理チャンネルとは、周波数帯ごとに決められた番号です。たとえば、NHK総合(東京)の場合、放送に使用している電波の周波数は、557MHzを中心として5.6MHz幅ですが、これに対応する物理チャンネルは「27」となります。

 一方のリモコン番号は、テレビ側で受信するチャンネルを指定する番号です。東京で、リモコンで「1」を指定するとNHK総合テレビを見られるのは、テレビの設定でリモコン番号「1」を指定したときに、物理チャンネル「27」の電波を受信するようにあらかじめ設定されているからです。

 リモコン番号に1〜12を使っているのは、アナログテレビで多くの局がVHS帯の周波数を使っており、従来のテレビのリモコンも1〜12のチャンネルボタンがついているのが標準だったのが理由です。リモコン番号と物理チャンネルの対応は、おおむね都道府県ごとに決まっています。地デジ対応テレビを設置するときに住所を指定しなくてはいけないのは、そのためなのです。



 なお、この表ではリモコン番号「3」に複数の局が割り当てられていますが、これらは住所によってそれぞれ対応する県域放送局のチャンネルに対応するように調整されます。また、同じ県内でもエリアによって対応する物理チャンネルが異なる場合があります。

 

■ 地デジ非対応テレビで、これからもテレビを見る方法

 地デジ非対応のテレビは、デジタル方式の放送を見られないテレビなので、アナログ放送用のアンテナを直接テレビに接続している形では、地デジを見ることはできません。とはいっても、準備が間に合わず、7月24日から突然テレビが見られなくならないために、いくつかの方法が用意されています。

【1】ケーブルテレビなどの「デジアナ変換」を利用する方法

 ケーブルテレビ事業者などが受信した地デジの信号をアナログ放送の形式・周波数に変換して送信します。局側で、ヘッドエンド(受信した信号をケーブルテレビ伝送ケーブルに送出する装置)にデジアナ変換装置を接続し、形式と周波数を変換して、「パススルー方式」という、STB(セットトップボックス)なしで見られる形式で送信されます。


 地デジ化が間に合わない、使えるアナログテレビを廃棄したくない、一度に複数台のテレビを買い換えるのは経済的に負担が重いといった要望にこたえることを目的に、総務省がケーブルテレビ事業者などに要請しました。2015年3月までの暫定措置として提供されます。

 視聴するには、サービスを提供しているケーブルテレビ事業者とのとの契約が必要。都市部の難視聴対策用に自治体などが委託している再送信でも、対応している場合があります。

 すでにケーブルテレビを1台以上契約していれば、アンテナ端子に地デジ非対応テレビを接続するだけでそのまま見られるので、一番簡単です。アナログ方式の録画機器なども、そのまま使えます(ただし、録画したもののコピーなどについては、一部制限がつきます)。

 デジアナ変換で受信している場合、画面右上に「デジアナ変換」という文字が表示されます。また、放送は標準画質(4:3)になりますので、16:9で送信されている地デジの番組では、画面の上下に、常時黒い帯が入ります。また、地デジの電子番組表(EPG)などは使えません。

 難視聴地域の共視聴アンテナや、マンションなどの共同アンテナでも、デジアナ変換でアナログ視聴が可能なケースもあるので、利用している場合は管理者に問い合わせてみるとよいでしょう。

 また、住んでいる地域にこれらのサービスがない場合でも、光ファイバー接続を利用したテレビサービスで、デジアナ変換に対応している場合があります(例:フレッツテレビ)。

【 参考リンク 】

■「デジアナ変換」を実施するケーブルテレビ事業者の公表(総務省)

■ケーブルテレビのデジアナ変換で視聴や録画される方へ(社団法人日本ケーブルテレビ連盟)


【2】簡易チューナーを使う方法

 ケーブルテレビなどがない場合でも、すでにアンテナが地デジに対応している場合は、簡易チューナーを購入して地デジ非対応テレビに接続して、地デジを見ることができます。自宅に地デジ対応テレビがすでにあって、アンテナは地デジにも対応しているケースや、マンションなど共同住宅で地デジを受信できる共用アンテナがあるようなケースです。


 簡易チューナーは、DVDプレーヤーやゲーム機などを接続する外部入力端子に接続し、外部入力画像として視聴します。チャンネルの切り替えはチューナー用のリモコンで行います。

 タイマー録画などはこのままではできないので注意が必要です。地デジ対応のレコーダーを別途用意するか、もしくはレコーダー専用の簡易チューナーを用意して、アンテナ分配器で信号を分配する必要があります。

【3】室内アンテナを利用した受信

 対応したアンテナがない場合は、室内アンテナを用意して簡易チューナーを接続することで、地デジ非対応のテレビでも地デジが視聴できる場合もあります。地デジ対応テレビはあるけれど、アンテナ工事が間に合わなかった場合や、賃貸住宅などでアンテナ工事ができない場合もこの方法で対応します。

 室内アンテナで受信するためには、一定以上の電波強度が必要です。自分の住んでいるエリアで、室内アンテナで受信できるかどうかは、社団法人デジタル放送推進協会の運営する、総務省テレビ受信者支援センター(デジサポ)のウェブサイトで確認可能です。

【 参考リンク 】

■地デジ支援デジサポ: 総務省テレビ受信者支援センター


 なお、受信可能エリアに入っていても、周囲の建物の高さなどによって受信状況は変わります。まずは、地デジ専用アンテナキットを借りて試すとよいでしょう。上記で紹介したデジサポのウェブサイトで、貸出し手続きが紹介されています。
 

■ とりあえずテレビは見られるけど、やっぱり早めの対策を

 ここまでの説明を見て、「このままでは、テレビが見られなくなります」って大騒ぎしたけれども、なんだ見られるじゃないか、という気分になった人もいるかもしれません。しかし、1チャンネルで複数の映像放送、字幕放送、データ放送、EPGなど、地デジならではの機能は、デジアナ変換や簡易チューナーを利用した受信では見られません。

 特に、ケーブルテレビなどのデジアナ変換を利用して視聴する場合、デジアナ変換のサービス自体は2015年3月末までで終了予定となっています。終了間際になって慌てないよう、早めの対策をオススメします。


著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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