テクノ雑学

第57回 冬のボーナスで快適なドライブライフを−VICSとETCの仕組み−

12月の足音がそろそろ近づいてきて、2006年ももうすぐ終わりです。12月といえば楽しみなのが冬のボーナス。車の購入を検討している読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。購入時に、検討するのがカーナビゲーションシステムやオプションですが、最近はVICSやETCという言葉を聞くことが増えています。今回のテクの雑学では、VICSとETCの仕組みについてみていきましょう。

ITSとは何か

VICSやETCという言葉はかなり知られるようになってきましたが、これらは、ITSと呼ばれるシステムの中の一つの技術です。

 ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)とは、コンピュータやネットワークなどの情報通信技術を使って、事故や渋滞などの道路交通問題を解決し、より安全、快適な移動を実現するためのシステムです。1996年2月21日に高度化情報通信社会推進本部により発表された「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」に基づき、当時の警察庁、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省の5省庁が中心となってとりまとめた、「道路・交通・車両分野における情報化実施指針」がその構想の元になっています。

 同指針では、ITSのカバーする分野として、以下の9つの開発分野を挙げており、このフレームワークにもとづいて基礎研究からシステム開発が精力的に進められています。

  1. ナビゲーションシステムの高度化
  2. 自動料金収受システム
  3. 安全運転の支援
  4. 交通管理の最適化
  5. 道路管理の効率化
  6. 公共交通の支援
  7. 商用車の効率化
  8. 歩行者等の支援
  9. 緊急車両の運行支援

(国土交通省道路交通局 ITSホームページより抜粋)
 

■ 道路の情報を広く集めて知らせる仕組み「VICS」

 VICS(Vehicle Information and Communication System)は、ITSの9つの分野のうち、1番めの「ナビゲーションシステムの高度化」のための基盤となる技術です。具体的には、カーナビや高速道路に掲示されている渋滞情報表示などで利用されています。カーナビの普及にともない、現在は年間300万台前後の端末が出荷されています。

 VICSで配信される情報は、警察や道路管理者から財団法人日本道路情報センターを通じて提供されます。この情報を、FM多重放送、電波ビーコン、光ビーコンの3つのメディアで発信します。

VICSのしくみ

 
FM-VICSは、FMラジオ局が放送する電波で提供される情報です。広域の情報で、文字や簡略化された図形で提供されます。

FM多重放送


 電波ビーコンは高速道路用のメディアで、進行方向の前方200km程度の高速道路、インターチェンジ付近の接続道路や一般道路情報について、渋滞情報や区間を通過するための所要時間などが提供されます。

電波ビーコン


 光ビーコンは、一般幹線道路沿いに埋め込まれたビーコン送信機から、カーナビなどに搭載された車載ビーコンユニットに赤外線で渋滞情報を送信します。送信される情報は、進行方向の前方30km、後方1kmの一般道路と高速道路の渋滞情報、区間を通過するための所要時間、駐車場情報、規制情報などです。

光ビーコン


 VICS対応のカーナビは、基本的にFM-VICSには対応していますが、電波ビーコン、光ビーコンはオプションの場合もあります。実際にどの方式のメディアを利用できるか、購入時にはよく確認しましょう。

■ 料金所の「イライラ」を解消するETC

 ドライブを快適にするシステムとしてここ数年注目されているのが、ETC(自動料金収集システム)です。2001年3月から一般運用が開始され、どんどん普及が進んでいます。

 注目される理由は、料金所で発生する渋滞の原因を根本的に解決できる可能性があるからです。東/中/西日本高速道路株式会社の調査によると、日本の有料道路の渋滞発生原因の3割が料金所に集中しています。つまり、料金所を一定時間に通過できる車の数を増やすことで、渋滞を大幅に緩和できる可能性があります。

 ドライバーが一度停止してチケットを受け渡ししたり料金を支払う、今までのスタイルの料金所では、1つのゲートを1時間に通過できる車の数は約230台です。これが、ETCを利用して停止せずに通過できるゲートでは、800台にまで増えるという調査結果が出ています。

 また、ETCのもう一つの長所は、環境にやさしいことです。料金所で停止するためにブレーキをかけ、発進するために加速することで消費されていたガソリンや発生していた排気ガスなどが、停止不要のETCでは節約できるようになります。

 ETCの利用のためには、料金所に設置されたアンテナから信号を受信できる車載器と、ETCカードが必要です。有料道路に入る時、アンテナから送られた信号を車載器で受信し、ETCカードに入口記録を残します。有料道路から出る時には、車載器からアンテナに入口記録を送信します。これにもとづいて有料道路事業者では料金を計算し、アンテナから車載器に記録を送信します。料金は、ETCカードを発行しているクレジットカード会社等を通して、利用者に請求されます。

ETCのしくみ


 ETCカードには、非接触式ICカードが使われています。これは、最近普及してきた「おサイフケータイ」でも使われている仕組みで、ICチップにカード保有者のカード番号や口座番号などの情報を登録しています。つまり、普段使っている自分の車とは別の車を利用する時にも、自分のETCカードを使うことで、支払いは一本化できます。

 したがって、ETCを利用するためには、車載器を購入して車に取り付けるだけでなく、ETCカードをクレジットカード会社や金融機関などから発行してもらうための手続きが必要です。また、車載器にも、車両を特定するための暗号化情報を登録する、セットアップ作業が必要です。

 とはいえ、最近は、カー用品店などで、これらの手続きを全て一括して行えるワンストップサービスも実施されており、以前に比べるとより手軽に導入できるようになっています。ETC対応の有料道路も増えてますます便利になってきていますので、年末年始のお休みに向けて、興味がある方は導入を検討してみるのもよさそうです。


著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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