テクノ雑学
第55回 きれいな写真で思い出記録 −デジタルカメラの手ブレ防止機能−
秋の行楽シーズンを迎え、写真を撮る機会が増える季節です。今は、携帯電話や小型デジタルカメラの普及で、印象的な風景や、子供や友人のいい表情など、シャッターチャンスを逃さず気軽に写真を撮れるようになりました。でもその時困りものなのが「手ブレ」。絶好のシャッターチャンスだったのに、液晶に映してみたら画像がぶれていたのでは楽しみも半減です。
最新のデジタルカメラや携帯では、「手ブレ防止機能」を売りにしている機種が増えています。今回のテクの雑学では、手ブレ防止機能の仕組みを見てみましょう。
なぜ手ブレは起こるのか?
手ブレが発生する原因は、撮影時にカメラが動いてしまうことです。デジタルカメラでは、シャッターを押すことで、CCD素子にレンズを通した光があたり、映像が記録されます。このとき、シャッターを押す力がカメラに加わることにより、カメラ本体がわずかに動くため、手ブレが発生します。
写真を撮影する時には、レンズを通した光がそのままCCD素子に届く(左)。
しかし、撮影時にカメラの固定が不十分な場合、シャッターを押す力でカメラ本体が動いてしまうことでCCD素子が動くため、記録される像がブレて手ブレが発生する(右)。
明るいところで撮影する場合にはそれほど気になりませんが、暗い時にはシャッターが開いている時間が長く、動きも大きくなるため、できあがった写真にもブレが目立ちます。
■ デジタルカメラの方が手ブレが起こりやすい?
もちろん、フィルムカメラでも手ブレは発生しますが、デジタルカメラや携帯電話の方がより手ブレが発生しやすいと言われることがあります。
撮影の仕組み自体については、デジタルカメラでもフィルムカメラでも手ブレの発生しやすさには変わりはありません。ではなぜそう言われるかというと、理由は、撮影する時のカメラの持ち方にあります。
従来のフィルムカメラでは、三脚などを使用しない場合でも、ファインダーを覗き込んでカメラを構え、脇をしっかりとしめて動かないよう固定します。一方、一般に普及しているデジタルカメラや携帯電話のカメラでは、ファインダーではなく液晶を目で見て構図を確認するため、撮影時には目とカメラが離れており、腕も伸びています。
手ブレを防ぐためには、シャッターを押す時にカメラを固定することが重要です。つまり、フィルムカメラの構え方に比べて、デジタルカメラや携帯の構え方では、シャッターを押した時にカメラが動きやすい、つまり手ブレが発生しやすいのです。
一眼レフタイプなど高価格帯のデジタルカメラでは、液晶ではなくファインダーで構図を確認できる機種があります。プロのカメラマンがデジタルカメラを使う時には、このような機種を使い、フィルムカメラと同じ構えで撮影しています。デジタルだから手ブレが起こりやすい、というわけではありません。
■ 手ブレ補正の仕組み
デジタルカメラの手ブレ補正には、光学式補正と電子式補正の2種類があります。
光学式補正には、補正用レンズを動かすタイプのものと、CCDを動かすタイプのものがあります。どちらのタイプも、シャッターを押した瞬間のカメラの動きをジャイロなどで検知して、自動的に補正します。
手ブレを感知して、補正用レンズを動かして光を曲げ、ブレを補正するタイプ(上)と、CCDを動かしてブレを補正するタイプ(下)の2種類の方法がある。
電子式補正(デジタル補正)は、撮影した画像のデータにもとづき、手ブレが無い状態のデータを作り出します。ブレの形や色の変化から元の画像を推定したり、1回の撮影で実際には複数枚の画像を連続して撮影し、比較して補正を行うなど、いくつかの種類のアルゴリズムがあります。
電子式補正は、光学式補正に比べて、特別な機械的仕組みが不要なため、カメラ本体が小さくできます。また、デジタル式なので、手ブレだけでなく、被写体の移動によるブレ(被写体ブレ)も補正ができます。
一方で、電子式補正は、補正のために画像データ処理が必要になるため、シャッターを押してから映像が記録されるまでに若干時間がかかる場合があります。また、補正のアルゴリズムによって、写真の仕上がりが若干異なってきますので、購入前にできれば試し撮りをしてみることが望ましいでしょう。
手ブレのない鮮明な写真で、今年の秋もたくさんの思い出を記録したいものですね。
著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など
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