テクノ雑学

第43回 花粉の季節の強〜い味方 −空気清浄機のしくみ−

 近年になく寒さが厳しかった冬もようやく終わり、春が近づいてきました。暖かくなるのは嬉しいのですが、つらくなるのが花粉症。今年の花粉の飛散状況はやや少なめという嬉しい予報ですが、それでも天気がよくなると憂鬱になってしまう人も多いでしょう。今週の雑学では、そんな人の強い味方、空気清浄機のしくみをとりあげてみましょう。

空気清浄機のしくみ

 空気清浄機の基本動作は、「空気といっしょに花粉やチリやホコリなどの粒子や臭いのもとになる物質を吸い込んで、フィルターで吸着して、きれいな空気を排出する」ことです。前面パネル・防塵パネル・脱臭パネルの背後にファンがあり、ファンが回転して空気を強制的に吸い込むことで空気の流れを作り出し、粒子をフィルターに吸着することで、きれいな空気を排出します。

空気の流れを作るしくみ


 こうして見るとわかりますが、空気清浄機の機能は「室内の空気から粒子やにおいを取り除く」ことです。新鮮な空気を入れる「換気」とは違います。たとえば、室内でタバコを吸ったとき、タバコの煙に含まれるニコチン粒子や臭いの成分は除去できますが、タバコが燃えるときに出る一酸化炭素などの有害ガス成分はそのまま室内を循環してしまいます。必要に応じて、換気扇と併用したり、窓を開ける工夫が必要です。

プラズマ式?イオン式?進化するフィルター

 空気清浄機では、フィルターの性能によって、吸い込んだ空気から除去できる粒子や臭いの種類が決まります。各メーカーとも、さまざまな特徴あるフィルターを工夫しています。

 集塵フィルターは、簡単に言えば目の細かい「ろ紙」のようなもので、フィルターよりも小さな粒子を通さないことで、粒子を除去するはたらきをします。最近主流なのは、「HEPAフィルター」で、タバコの煙の粒子(大きさ0.3μm)を99.97%以上除去できるものです。

 また、最近は、集塵フィルターに「プラズマ式」と呼ばれるしくみで、カビやウィルスの繁殖を防ぐ抗菌フィルターを一体化させたものが増えています。プラズマ式とは、電極に高い電圧をかけてイオンを発生させることで、効率良く粒子をフィルターに集めると同時に、カビ、ウィルス、アレルギー原因物質などを除去するしくみです。

カビ菌を除去するしくみ
カビ菌を除去するしくみ
カビ菌を除去するしくみ


 また、プラズマ式フィルターに、フィルター内を通過する空気に紫外線を照射することで細菌やウィルスの活動を抑制する「紫外線フィルター」を組み合わせてさらに除菌性能を高める工夫をしたフィルターもあります。

 消臭フィルターは、活性炭で臭いの元となる微粒子を吸着・分解します。よく「イオン消臭」をうたっている製品がありますが、これは消臭フィルターにもプラズマ式を併用して、粒子を吸着し、分解しているものです。

 他に、酸化チタンの結晶に特定の波長の紫外線をあてると過酸化水素水と水酸基ラジカルを発生することを利用して、プラズマ式と同様の反応で細菌やウィルスやにおいを除去する光触媒式フィルターや、フィルターを使わず微細な水の粒(ナノ微細水)とマイナスイオンを空気中に放出することで粒子を吸着し、回収するタイプの空気清浄機なども市販されています。

 ところで、「イオン式空気清浄機」という表記を時々見かけることがありますが、これはファンを使わず、帯電したホコリや粒子を電気の力で電極に引き寄せることで空気の汚れを取るタイプの空気清浄機です。これに対して、ファンを使って空気の流れを作るタイプの空気清浄機は、ファン式といいます。同じ「イオン」という言葉を使っていても、イオン消臭やプラズマ式フィルターとは違いますので、購入時には注意してください。

使い方の注意

 空気清浄機を選ぶ時にまず大切なのは、適用床面積と風量です。部屋の隅々まできれいな空気が行き渡るためには、広さに応じて多くの空気を一度に吸い込み、勢いよく排出する必要があるというわけです。どちらの数値も、大きいほど、早く空気がきれいになるという目安になります。イオン式空気清浄機は音が静かなのが長所ですが、ファンがない=風量がないため、広い範囲の空気をきれいにすることはできません。用途や部屋の広さを考えて選びましょう。

 置き場所も重要です。機種によって排気口の向きが異なるので、部屋の空気が循環しやすいように置きましょう。1つの部屋に小さめの空気清浄機を2台置いて、空気の流れを2つ作るのも、隅々まで空気を動かすためには効果的です。

 また、使う時には、フィルターの洗浄や定期的な交換をこころがけましょう。特にフィルターは、使用条件によって寿命が大きく変わります。おおむね、空気の清浄に要する時間が新品の2倍、においの除去率が半分になるのがフィルター交換の目安です。多くの機種では、フィルターの替え時が分かるようなインジケーターが用意されているので、定期的にチェックしてください。

 人の手では取り除けない空気の汚れをとってくれる空気清浄機を上手に活用して、春の陽気を気持ちよく過ごしたいものです。
 

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■日本電機工業会 > 家電 > 家庭用空気清浄機



著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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