テクノ雑学
第41回 キャリアを変えても番号は、そのまま!−ナンバーポータビリティサービスの仕組み−
ナンバーポータビリティサービスの仕組み
キャリアを変えても番号は、そのまま! −ナンバーポータビリティサービスの仕組み−
最近のケータイは、新機種が発売されるたびに新たな機能が追加され、公式サイトで魅力的なサービスが続々誕生しています。ついつい買い換えを考えてしまいますが、問題になるのがケータイ番号です。
同じキャリアの機種変更なら同じ番号をそのまま使えますが、別のキャリア(通信会社)の機種に乗りかえようとすると番号が変わってしまいます。そんな「困った」を解決するのが、今年秋から導入予定の「ナンバーポータビリティサービス」です。
■ なぜ今までできなかったの?
携帯電話の番号は、090または080-xxxx-yyyy、という11桁の番号になっています。実は、この番号の頭から7桁(*)は、キャリアに対して割り当てられているのです。具体的にいうと、NTTドコモに対して割り当てられた番号を、auの端末が使うことはできません。同じキャリアなら、「機種変更」で同じ番号を使えます。
* 正確には、1桁目の「0」が市外識別番号、2〜3桁目の「90」または「80」がサービス(携帯)識別番号、4〜6桁目もしくは7桁目までが事業者識別番号(キャリアの識別番号)ですが、結局頭の7桁を見ればキャリアが特定できるという意味でこのような表現をしています。
【 関連情報リンク】
■総務省 > 電気通信番号指定状況
また、携帯電話のキャリアは現在3つといわれていますが、実際の運用や番号の割当は、地域別に別会社になっています。例えばNTTドコモなら、「NTTドコモ」「NTTドコモ北海道」「NTTドコモ東北」「NTTドコモ東海」「NTTドコモ北陸」「NTTドコモ関西」「NTTドコモ中国」「NTTドコモ四国」「NTTドコモ九州」の9社に分かれており、番号の割当はそれぞれに対して行われています。日本国内ならどこでも同じ番号で通話ができるのに、引越しをして最寄のショップで機種変更しようとすると、手続きに時間がかかったり、断られる場合があるのはそのためです。
■ ナンバーポータビリティを実現する仕組み
気に入った機種があっても番号が変わってしまうような場合、知人に新しい番号を知らせる手間を考えて、買い替えをためらってしまう人も多いと思います。逆に言えば、一番最初に選んだキャリアの端末をずっと使い続ける人が多いということでもあります。そのため、キャリア各社は従来、新規ユーザーの獲得に力を入れてきました。同じ機種でも、機種変更に比べて新規契約の端末の価格が安いのにはそんな理由もあったのです。
ところが、携帯電話の普及率が高くなり、新規契約よりも機種変更が増えるにつれ、番号が変わることが理由でキャリアを乗り換えられないのは、キャリアの自由競争を妨げているという意見がユーザーからもキャリアからも出てきました。こうした意見を受け、2004年4月には総務省から「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」報告書が公表され、ナンバーポータビリティサービス実現に向けて関係各社での調整がはじまりました。
ナンバーポータビリティサービスを実現する技術としては、「転送方式」と「リダクション方式」の2つの方式があります。
転送方式は、変更前のキャリアで電話を受け、そのまま呼び出し信号と通話を変更後のキャリアに転送する方式です。固定電話にかかってきた電話を携帯に転送するのと同じような仕組みです。仕組みは簡単ですが、既に自社のユーザーではなくなった利用者のために回線を使わなくてはいけないなど、キャリアにとっては負担が大きい方式です。
これに対して、リダイレクション方式は、通話を中継するNTTなどの固定網から、変更前のキャリアに対して、通話の転送先を問い合わせ、変更後のキャリアに接続する方式です。変更前のキャリアは、新しい番号の問い合わせにこたえるだけで、呼び出し信号や通話は変更後のキャリアと直接行います。キャリアの負担は少ないですが、NTTなどの固定網側で、交換機のソフトを対応したものに変える必要があります。
2005年10月、NTT東日本・NTT西日本から、リダイレクション方式への対応は2007年2月になるという発表が正式にありました。つまり、2006年11月からそれまでの間は、転送方式でナンバーポータビリティを実現し、2007年2月以降、徐々にリダイレクション方式に移行していくと思われます。
■ メールアドレスに注意!
ナンバーポータビリティサービスを利用する時に注意しなくてはいけないのは、メールアドレスです。同じケータイ番号で移行できても、現行の制度では、メールアドレスは変わってしまいます。
メールアドレスは「xxxx@yyyy.ne.jp」のように、@(アットマーク)を挟んで前と後ろに分けられ、@から後ろを「ドメイン名」と言います。ドメイン名は、そのメールアドレスを管理している組織によって決まるのが、メールアドレスの決まりです。
ケータイのメールアドレスは、キャリアによって管理されています。つまり、ドメイン名はキャリアによって決まってしまうので、ナンバーポータビリティを利用して同じ番号でキャリアを乗り換えると、メールアドレスのドメイン名の部分は必ず変わってしまうのです。
メールアドレス以外にも、アドレス帳やメールのデータなど、ケータイからそのまま移動したいデータはたくさんあります。ナンバーポータビリティサービスの実現をにらんで、アドレス帳管理機能などがついた携帯専用のメール転送サービスが発表されています。
【 関連情報リンク】
■さくらインターネット > 携帯メールアドレスポータビリティ化サービス「MYM.SGマイメッセージ」を開発へ
こうしたサービスを上手に活用することで、今まで番号やアドレス変更がネックとなってなかなかできなかったキャリアの乗換えができるのは楽しみですね。また、乗換えが容易になることで、各キャリアからはユーザーを集めるためにより魅力的なコンテンツや料金プランが出てくることも期待したいと思います。
著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など
TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです