テクノ雑学

第35回 インターネットでラジオ放送? −Podcast(ポッドキャスト)の正体とは−

Podcast(ポッドキャスト)の正体とは

 「ポッドキャスト」という言葉を最近よく見かけます。2004年の夏ごろにアメリカで誕生した、手軽にインターネットで音声放送ができる仕組みです。個人での放送が主でしたが、最近は新聞社やラジオ局などが番組の放送をはじめています。

ポッドキャストが注目される2つの理由

 「ポッドキャスト」という言葉を最近よく見かけます。2004年の夏ごろにアメリカで誕生した、手軽にインターネットで音声放送ができる仕組みです。個人での放送が主でしたが、最近は新聞社やラジオ局などが番組の放送をはじめています。

 ポッドキャストの語源は「iPod」+「Broadcast」。iPodはアップル社から発売されている携帯用MP3プレイヤー、Broadcastは「放送」。iPodで聞くインターネット放送、をイメージした造語です。とはいっても、実際には、ポッドキャストは単なる「音声ファイルをインターネット上で公開する仕組み」にすぎません。なのにこれだけ注目されてる理由は2つあります。

 1つめの理由は、新しい音声ファイルが勝手にユーザーに「配信」される仕組みになっていることです。従来のウェブを使ったファイル公開では、ユーザーが自分でWebを確認しにいかないと新しい番組があることが分かりませんでした。更新されたことを知らせるためには、メールなど、別の仕組みが必要だったのです。

 ポッドキャストでは、アグリゲーターという専用ソフトを使います。ユーザーは、あらかじめ番組をアグリゲーターに登録しておきます。番組の登録は、ほとんどの場合、専用のボタンをアグリゲーターにドラッグ&ドロップするだけで簡単にできます。一度登録してしまえば、番組制作者が新しい番組=音声ファイルをサーバーにアップロードするたびに、アグリゲーターが自動的に新しい番組をダウンロードしてくれます。

 2つめの理由は、ダウンロードしたファイルをそのままiPodなどに入れて聞けること。アグリゲーターに表示された番組リストの中から聞きたいものを選んで転送するだけで、ファイルを外に持ち出せます。朝出かける前にアグリゲーターからニュース番組を選んで取り込み、通勤電車の中で聞く、といった使い方ができます。

 もちろん録音してある番組ですから、「今日の占い」のコーナーでちょうど電車が地下に入っちゃって聞けなかったよ!ということもありません。騒音が多くて音が聞きづらいところでは一時停止もできます。新しい情報が飛び込んでくるラジオのよさと、自分の都合にあわせて聞けるmp3プレーヤーのよさを、両方兼ね備えた仕組みです。

Podcastのしくみ

配信方式はRSSと同じ?

 ところでこの仕組み、何かに似ていませんか?そう、「テクの雑学」第33回でとりあげた、RSSリーダーです。「RSSリーダーで更新情報を集めて、記事リストの中から読みたいものを選んで表示する」に相当するのが、「アグリゲーターで更新情報を集めて、番組リストの中から聞きたいものを選んで転送する」ところにあたります。

 それもそのはず、実際にポッドキャストで番組配信に利用されているのは、RSS2.0なのです。似ているどころかまさしくRSSリーダーそのものです。アグリゲーターは、エントリーの記事を表示する代わりに、音声ファイルをダウンロード・転送する仕組みを用意した、特殊なRSSリーダーであると考えることができます。代表的なアグリゲーターといえば、iTunesですが、他にもさまざまなフリーのアグリゲーターが公開されています。
 

Alligator ver.β

 

Podcast野郎&Pod野郎

【 関連情報リンク:代表的なアグリゲーター 】

■iTunes(Windows/ Mac OS X) <http://www.apple.com/jp/itunes/download/>

■Pod野郎(Windows)

■アリゲーター(Windows/ Mac OS X)


 RSSといえばブログをイメージする人も多いと思いますが、ポッドキャストも、対応するブログサービスが出てきてから番組の数が爆発的に増えました。元々多くのブログエンジンにはRSS1.0やATOMなどで更新情報を出力する仕組みがありますから、そこをちょっと変えてRSS2.0で出力するようにしてやれば、ポッドキャスト対応のブログサービスになるわけです。

【 関連情報リンク:ポッドキャストに対応したブログサービスの例 】

■ケロログ| VOICE BLOG PORTA

■livedoor ネットラジオ/ねとらじ

■seesaaブログ


 番組の制作にはいろいろな方法がありますが、要はパソコンでmp3形式の音声ファイルを作成できればいいのです。一番簡単な方法は、パソコンにマイクを接続して、自分の声を録音し、mp3に変換する方法です。一人で録音するのはどうも緊張するという人向けにはskype(音声を利用したメッセンジャー)での会話をそのまま番組にする「skypecast」という方法も最近あるようです。ICレコーダーなどを使って録音した音声をパソコンに取り込んで変換してもよいでしょう。

 もちろん会話だけではなく、音楽を配信することもできます。ミュージシャンがプロモーション用に自分の曲を放送している番組もたくさんあります。ただし、市販のCDやネット上で流れている音楽・音声ファイルを勝手に自分の番組に取り込むことは、著作権の侵害になりますので、注意してください。
 

■ 配信以外のサービスも始まっている

 作成した音声ファイルを、ポッドキャスト対応のブログサービスを使って公開すれば、ポッドキャストの放送が開始されます。@niftyが提供する「Podcasting Juice」では、ポッドキャストに対応していないブログサービス用に、RSS2.0を作成するサービスを行っています。
 

【 関連情報リンク 】

■Podcasting Juice


 また、最近は、同じ仕組みで動画を配信する「ビデオポッドキャスティング」放送も増えてきています。最新のiPodでは、液晶で動画を再生できるようになりましたから、こちらの動向も今後目が離せませんね。
 

【 関連情報リンク 】

■iPod向け VideoCast専門テレビ局 PodTV


 さて、ここまでの記事を読んでいただけば分かるとおり、実はポッドキャストはiPodが無くても楽しめます。iPod以外のmp3プレーヤーも使えます。外に持ち出すことを考えず、音声を聞くだけならパソコンも使えます。多くのアグリゲーターでは、音声だけでなく動画の再生にも対応しています。

 ポッドキャストという呼び方は「iPodがないと聞けない」という誤解を招きやすいので、ブログキャスティングと呼ぼうという動きもあります。呼び方はどうであれ、電車や車の中でもネットのコンテンツが気軽に楽しめるようになったのは嬉しいものです。


著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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