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第19回 排気ガスは無害な水蒸気 —燃料電池で発電する仕組み—

燃料電池で発電する仕組み

第19回 排気ガスは無害な水蒸気 —燃料電池で発電する仕組み—

 2月16日の「京都議定書」発効で、二酸化炭素やメタンなどの、地球温暖化の原因となる物質の排出量削減が急務となっています。日本の二酸化炭素排出量のおよそ2割が、自動車によるものであり、排気ガスを出さない自動車の開発が大きな課題です。
 

【 関連情報リンク 】

■自動車と地球環境  NEDO:新エネルギー・産業技術総合開発機構


 排気ガスを出さないクリーンな自動車といえば、電気自動車がすでに実用化されています。しかし、電気自動車には、充電時間が長く、連続走行距離が短いという問題があります。街中の移動用には支障がなくても、長距離輸送のトラックなどにはそのままでは使用できません。

 電気自動車のこの問題を解決する一つの方法が、電気とエンジンを併用するハイブリッド・カーです。確かに従来の自動車に比べると、二酸化炭素や窒素酸化物の排出量を削減することはできますが、完全に抑えることはできません。この問題を解決できる新しいエネルギー源として注目されているのが、「燃料電池」です。

 電池には使いきりタイプの「一次電池」と、充電により繰り返し使用が可能な「二次電池」の2つの種類があります。どちらも化学反応を利用して電気を取り出す仕組みです。一次電池は反応物質を使い切ったらそれきりなのに対し、二次電池は「充電」で反応物質を元に戻して繰り返し利用します。これらの電池と異なり、燃料電池は、反応物質そのものを「燃料」として補給することで、電気を供給しつづけるものです。電池とはいっても、一種の発電機のようなものです。

 燃料電池を使った自動車のいいところは、次の5つのポイントです。
 

温暖化効果ガスを出さない
最も多く使われているタイプの燃料電池では、水素と酸素が燃料となります。これらの化学反応では、反応後に排出されるのは水蒸気だけで、二酸化炭素や窒素酸化物は全く排出されません。

エネルギー効率が高い
ガスを爆発させながら動かす、自動車のエンジンは大変高温になります。熱が発生するということは、つまり取り出せるエネルギーはそれだけ少なくなっているということです。対して、燃料電池では、直接電気を取り出せるため、それだけエネルギー効率が高くなります。一般のガソリン内燃機関自動車のエネルギー効率が15〜20%なのに比較して、燃料電池自動車では30%以上と、2倍程度になっています。

石油以外のエネルギーが利用可能
水素と酸素を燃料に使う燃料電池では、天然ガスやメタノールなど、石油以外にも多様なものをエネルギー源として使うことが出来ます。

騒音が少ない
化石燃料を使ったエンジンと異なり、燃料電池は化学反応で電気を取り出すので、音がしません。

充電が不要
二次電池の充電では、再度電池が使用できるようになるまで時間をかける必要がありますが、燃料電池では、燃料となる物質を「補給」すればまた電気を取り出すことができます。再使用までに時間がかかりません。

 

■ 燃料電池の仕組み

燃料電池の仕組み


 燃料電池は、一言でいうと、「水の電気分解の逆で、電気を取り出す」仕組みです。

 水に食塩などの電解質を加え電極をひたして電流を流すと、陰極側には水素、陽極側には酸素が発生します。発生した水素と酸素をそのまま逃げないように貯めておいて、電池の代わりに豆電球を繋ぐと点灯します。
 

【 関連情報リンク、ならびに情報協力 】

■なるほど!燃料電池 : あっ!本当に電気分解の逆だ!  東京ガス株式会社


 このとき、陰極側では、水素が水酸化イオン(OH-)と反応して、電子が発生しています。

  H2 +2OH- → 2H2O + 2e-

 この電子が、電線の中を移動して、電流が流れています。

 また、陽極側では、流れて来た電子が、水と酸素に反応して、水酸化イオン(OH-)が発生します。

  H20 + 1/2×O2 + 2e- → 2OH-

 つまり、燃料電池の中では、OH-が陽極から陰極に移動していくことで、電気が流れつづけることになります。酸素と水素がなくなったら発電はとまりますが、外部から酸素と水素を補給すればまた発電がはじまるのです。これが、燃料電池の原理です(実際には、電解質や物質に何を使うかによって、反応式は若干変わります)。

 実際の燃料電池では、電極、触媒、電解質を層状に重ねて、上下に酸素と水素を通した「セル」をたくさん積み重ねています。一つ一つのセルが発電する電気の量は小さいですが、多くのセルを積み重ねることで、大きな電気を取り出すことができます。

燃料電池の構造


 電解質の種類によって、燃料電池はいくつかの種類に分類されます。種類によって運転温度が大きく異なります。

燃料電池の種類


 一般家庭用電池として注目されているのは、運用温度が比較的低い「固体高分子膜」タイプです。燃料電池を運用した時に出る発熱を暖房や給湯に利用することで、さらに効率よいエネルギー利用ができます。また、運用温度が高いタイプのものは、施設用の自家発電装置などで既に一部実用化されています。

 燃料電池の用途は、もちろん電気自動車だけではありません。東芝では、2003年3月、ノートパソコン用のダイレクトメタノール型燃料電池の開発に成功したと発表しました。これが商品化されれば、長時間の外出でも電池を取り替えるような感覚でノートパソコンを連続使用できるようになります。ノートパソコン以外にも、携帯電話などさまざまな機器で利用が可能です。地球環境のためにも、便利な生活のためにも、注目していきたい技術です。

【 関連情報リンク、ならびに上記イラストのモチーフ出典 】

■技術解説 わかる!燃料電池  NEDO:新エネルギー・産業技術総合開発機構

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著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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