テクノ雑学

第21回 パートナー型ロボットの可能性 −ゴールデンウィークはロボットと遊ぼう!-

パートナー型ロボットの可能性

 手塚治虫が描いた「鉄腕アトム」が生まれたのは2003年。2年も前のことになりますが、漫画の中とは違い、人間とロボットが街を並んで歩くような世界の到来はもう少し先になりそうです。とはいっても、すでにこの世の中には、たくさんのロボットがいます。現在開催中の愛・地球博でも、数多くのロボットが展示されています。今回のテクの雑学では、「ロボットの今」についてみてみましょう。

 1970年代から、日本のメーカーは、世界に先駆けて工場内の作業の自動化のためにロボットを導入しました。主に単純作業を高速に行ったり、危険な作業を人間の代わりに行うロボットは、日本の高度成長を支えていたのです。やがて、ロボットは、工場内だけでなく、工事現場や農林水産業の現場、水中や原子炉などの危険な環境での作業などにも使われるようになっていきました。これらのロボットを、産業用ロボットといいます。

 ここ数年は、工場の自動化なども極限に近いところまで既に実現しており、産業用ロボットの市場はむしろ伸び悩んでいます。代わって注目されているのが、一般の人の日常生活の中で使われる非産業用ロボットです。ロボットといえば多くの人が思い浮かべる、ホンダが研究・開発しているヒューマノイドロボット「ASIMO」も、非産業用ロボットの一つです。

次世代ASIMO  (C) Honda

 ホンダで、ヒューマノイドロボットの研究が開始されたのは1980年代。二足歩行する最初のロボット「E0」が発表されたのが1986年です。E0は、歩き方の研究に主眼を置いていたので、形も人の腰から下だけを模したような形でした。そこから、二足歩行の技術を改良していき、上半身もついた最初のヒューマノイド型ロボットとして誕生したのが、1993年に発表された「P1」でした。さらに小型化と軽量化をはかり、また制御用のコンピューターを内蔵して、人間の生活に溶け込めるような形と大きさを目指しました。電源部分はランドセルのような形で背中に背負わせるなど、より人間らしく見せる工夫もこらされています。そして2000年に誕生したのが「ASIMO」なのです。

【 関連情報リンク 】

■The HONDA HUMANOID ROBOT ASIMO Fact Book

初代ASIMO/E0  (C) Honda


 最新のASIMOは、プログラムどおりに動くだけでなく、人の姿勢や動きに反応して挨拶したり、移動したりといった自律的な行動ができるようになっています。2010年には、一般家庭の生活に溶け込めるヒューマノイドロボットの開発を目指して研究が続けられています。

既に家庭内に入っているロボットもあります。先がけとなったのは、ソニーが開発し、1999年6月に発売した「AIBO」です。発売前から話題となり、初代AIBO ERS-110はインターネット限定での予約販売で、しかも25万円という価格にもかかわらず、わずか20分で3000台が完売したというエピソードがあります。
 

AIBO「ERS-110」  (c) Sony Marketing (Japan) inc.

 AIBOは人間と共に暮らすことを考えて開発された自律型の4足歩行ロボットです。人から命令をされたり、何か働きかけをされなくても、自分で考えて行動を起こし、家庭の中を動きまわりながら人間と暮らすことができます。手や足が動くことももちろんですが、人の声やメロディに反応して意味を理解したり、頭をなでると機嫌がよくなってしっぽをふるなど、人とのコミュニケーションに重点を置いた開発がされています。AIBOに続き、2000年にはバンダイの猫型ロボット「BN-1」、2001年にはオムロンから人工毛皮で手触りも猫っぽくした「Necoro」など、ペットロボットが続々と発売されました。

【 関連情報リンク 】

■AIBO Official Site(Sony)

AIBO「ERS-7M2」  (c) Sony Marketing (Japan) inc.

 最近のペットロボットで話題なのが、セガトイズが今年発売した「idog」です。鼻や頭をさわったり、音楽を聞かせると、顔に埋め込まれたLEDが点滅して反応します。また、あらかじめセットされた短いフレーズを組み合わせて、自分の感情を音楽で表現します。
 家庭の中で働くロボットもいます。テムザック三洋が今年1月発表した「ロボリア」は、センサーが異常を感知すると、ユーザーの携帯電話に電話をかけ、内蔵カメラの画像をリアルタイムに送信します。また、ユーザーはロボットを携帯電話で遠隔操作することができます。普段はLED内蔵の光るオブジェとして楽しむことができます。予定販売価格は税込28万円と、一般家庭にも導入できる程度の価格となりそうです。

【 関連情報リンク 】

■ロボット+インテリア「ロボリア」
(テムザック三洋株式会社)

 

ロボリア  (c) 株式会社テムザック

家庭用ロボットとしてこれから注目されている分野に、介護があります。高齢化・少子化社会を迎え、高齢者を介護する家族もまた高齢化により体力のいる作業が困難になってくるという問題が懸念されていますが、介護用ロボットの開発で解決が期待できます。国も政策課題として技術調査に乗り出しています。

 ネットワークとロボットを組み合わせた新しいサービスも研究されています。国内のロボットメーカーの業界団体「ロボットサービスイニシアチブ」は、ネットワークを介してロボットが情報提供したり、さまざまな作業をする「ロボットサービス」を推進しています。ネットワーク経由でロボットを操作するコマンドを標準化したり、ネットワークを使って調べものやメールの送信をしてくれるロボットも実用化に向けて開発がすすめられています。

ロボット開発で今後重要となる技術分野

 ロボットは、さまざまな技術の複合体です。エレクトロニクスやメカニズムだけでなく、素材、バッテリー、音声合成、センサー、通信、ソフトウェア、デザインなど、さまざまな分野の技術が組み合わされて実現するのがロボットです。まさに、最先端の技術の結晶として形になったものがロボットであると言えるでしょう。

【 関連情報リンク、ならびに上記イラストのモチーフ出典 】

■Tech総研 「鉄腕アトムを作りたい人、この指とまれ!」

 現在開催中の愛・地球博でも、多くのロボットが出展されています。トヨタグループ館では、トヨタ・パートナーロボットによる楽器演奏ショーやディスクジョッキー、そして人を乗せて2本の足で歩く「i-foot」のショーが見られます。ロボットステーション内のロボットふれあい広場では、NECのチャイルドケアロボット「パペロ」と遊べます。このゴールデンウィーク、足を運んでみてはいかがでしょうか。
 

【 最新情報リンク 】

■ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所
ソニーグループ会社で人工知能(AI)を研究しているソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所が、ヒューマノイドロボット『QRIO(キュリオ)』に、過去の記憶から自発的に行動を可能とするAI技術を駆使し、経験を積みながら判断する技術を盛り込んだロボットを4月8日に開催された「インテリジェンス・ダイナミクス2005」において披露致しました。発表内容については上記Webサイトで、近日公開される模様です。

■株式会社ゼットエムピー
世界初*の家庭向け人型二足歩行ロボット『nuvo』が、4月下旬より株式会社ゼットエムピーより発売されるそうです。研究機関や教育実習など、限られた状況でしか利用されていませんでしたが、一般家庭にお目見えすることになるようです。詳細は、上記Webサイトまで。

* 2005年4月1日現在



著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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