テクノ雑学

第2回 温度差で電気を作れるってホント? —— 耳の中から宇宙まで ——

温度差で電気を作れるってホント?

まだまだ海水には冷たさが残りますが、四方を海に囲まれた日本の風物詩、潮干狩りのシーズン到来です。水面はそれほどでもないのに、いざ足を入れてみると足元の海水が想像以上に冷たく、その差に驚いている子供たちの姿を見るのも楽しいものです。この海水の温度差自体を利用した発電プロジェクトが進んでいるのをご存じでしょうか?  

ただし、経済性など解決しなければならない問題も多く、海洋牧場や海水淡水化などと組み合わせた総合的な海洋資源活用の試みが進められている段階です。今後は、海洋国・日本の技術力の見せどころとなるかもしれません。

実は、温度差を利用してエネルギーを発生させることは、海水温度差発電だけではありません。すでに私たちの身の回りで実用化されています。代表的なものは、2種類の金属や半導体の接合部に温度差があると接点間に電圧が生じる原理を利用するものです。この原理を「ゼーベック効果」といい、熱電発電分野の最も基本的な原理として有名です。

熱電発電は宇宙開発の分野で早くから利用されており、1977年に打ち上げられた「ボイジャー1号」にもこの原理を応用した装置が搭載されていました。身近なところでは体温と外気温の温度差を利用して発電させ、その電力を使って腕時計を動かすというものがありました。発売当初、大きな話題を集めたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。また、最近流行の耳式体温計のなかには、この原理を使って測定しているものがかなりあります。  

これらの例を見てもわかるように、宇宙開発から耳式体温計まで、形態の大小に関係なく発電できることが温度差発電の最大のメリットです。その上、現在捨てられている熱エネルギーを利用できるため、環境に優しいばかりでなく、無尽蔵ともいわれる太陽熱や地熱などの自然熱を利用することも可能です。ただし、そのメリットを享受できるまでには、まだ解決しなければならない数多くの問題点があります。くれぐれも、電気は大切に使いましょう。

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