テクノ雑学
第1回 研究者が追い求めた青い鳥 — 青色発光ダイオードの貴重性 —
青色発光ダイオードの貴重性
最近、信号がとても見やすくなったと感じている方も多いのではないでしょうか。これまでの信号機は、太陽光線が差し込んだ時など、何色が点灯しているのかわかりづらくなる疑似点灯といわれる現象が起きていました。西日の強い夏の夕方など、青信号だと思って交差点に進入したら、実は赤信号でヒヤリとした方もいらっしゃるでしょう。それはこの疑似点灯が原因だったのです。
最近の信号機は疑似点灯が起こらない発光の仕組みを採用しているので、遠くからでもはっきりと認識できるようになっています。その仕組みとは、社会現象といってもいいほど話題を集めた「発光ダイオード」の技術をベースにしています。 「青色発光ダイオード」という言葉が新聞紙上を踊ったのは最近のことですので記憶している方も多いでしょう。しかし、これほど注目を集めているわりには、青色発光ダイオードそのものについて語られることはそれほど多くありません。
実は、青色発光ダイオードの発明は、エレクトロニクスの世界では「世紀の発明」と言われるほどのインパクトを持っているのです。青色発光ダイオードは「真空管が半導体に取って代わった時と同様の発明性である」と言う人もいるほどです。
発光ダイオードは従来の発光体とは異なり、電気を流すことで光を出す半導体です。余計な熱が発生せず、低電力で高輝度の発光が得られるためディスプレイへの用途が期待されていました。1980年代中頃までには、赤色、緑色は実用化されていたものの、青色を発光する高照度のダイオードは21世紀までは不可能と言われていました。430〜460nmという波長の短い青色を発光させるのは、世界の大企業がこぞって開発競争を展開しても難しい技術だったのです。
こに青色ができれば光の3原色が揃うのです。この3色の掛け合わせでほとんどの色を再現できるようになります。単純な掛け合わせでも、赤と青の掛け合わせで紫色を作ることができ、赤と緑で黄色、青と緑で水色、3原色すべてを掛け合わせると白色を作り出すことができます。つまり、赤、緑、青という色の量を少しずつ変化させることによってフルカラーを再現できるようになります。エレクトロニクス技術で天然色を実現するために、世界の技術者は「青い鳥」を求めて日夜奮闘してきたのです。
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