テクの図鑑

vol.21 最先端の実装技術を集約した高信頼性 世界が認めるフリップチップボンダ

最先端の実装技術を集約した高信頼性

 

世界が認めるフリップチップボンダ ICやパワー(高光出力)LEDの実装などに、今後急拡大すると予測されるのがフリップチップ実装システム。生産現場の声を徹底的に吸い上げ、コアテクノロジーの粋を結集して開発したのがTDKのフリップチップボンダAFM-15。低エネルギー接合・実装精度・信頼性・ランニングコストなどで他社の追随を許さない。

実装技術がもたらす新たな小型化革命

積層チップコンデンサをはじめとするSMD(Surface Mount Device)部品の小型化は、プリント基板の大幅な省スペースをもたらした。メール機能、カメラ機能、電子マネー機能など、携帯電話の多機能化もSMD部品の小型化によって牽引されてきた。しかし、主要な機能部品であるICは、その構造上、積層チップ部品のような小型化が果たせず、今やプリント基板の省スペース化の障害とさえなっている。従来、ICはウエハから切り出された半導体チップをリードフレームの上に乗せ、ワイヤボンディングにより配線してパッケージされてきた。ワイヤボンディングとは細い金ワイヤをヘッドから送り出しながら超音波振動によって順繰りに融着していく方式である。しかし、半導体チップそのものはごく小さく薄い。したがって、リードフレームをなくし、ベア(裸)チップのままプリント基板に実装できるようにすれば省スペース化が可能になる。そこで、ベアチップをプリント基板(或いはデバイスパッケージ)上にワイヤボンディングして樹脂モールドする工法も開発された。  

フリップチップボンディングは、このワイヤさえも省いてしまう方式だ。フリップとは“反転する”という意味の英語である。ベアチップの表面には配線のためのバンプ(電極端子)と呼ばれる突起部分が設けられる。ワイヤボンディングではこのバンプを上面として配線しているが、フリップチップボンディングは、バンプが下面となるように反転してダイレクトに実装することからのネーミングである。

ベアチップのまま高精度でワイヤレス接合

フリップチップ実装の特長は半導体チップの任意の位置から電極が取り出せるところにある。このため配線が最短になり、電極数が増えてもチップが大きくならない。フリップチップ実装は接合方式の違いによって各種タイプがある。しかし、ベアチップのバンプや基板のパッドに“はんだ”を用いる方式は鉛フリー化の問題をかかえ、導電性ペーストなどを用いる熱圧着方式は接合時間の短縮化が難しい。AFM-15が採用しているのはパンプとパッドに主として金(Au)を用いるAu-Au接合方式である。超短時間で高信頼性接合が可能で、生産性においても最もすぐれ、これからの主流となりつつある方式である。  

Au-Au接合方式のフリップチップボンダは、実装ヘッドから加えられる荷重と超音波ホーンから伝わる振動によりバンプと電極パッドを融着・接合する。しかし、実装ヘッドの荷重を単純に増加すると、ベアチップに与えるダメージも大きくなり装置も大型になってしまう。そこでTDKでは接触時の衝撃力を低減する独自の荷重増加プロファイルを導入。さらに荷重を加えてもたわむことのない高強度・高出力かつ軽量なヘッドを開発、接合に要する0.3秒を含めて1.1秒という超高速実装を達成した。±8μm以下という実装精度も業界最高を誇る。

生産技術を提案できるのはTDKだけの強み

これから大幅に伸びるとみられているフリップチップ実装。なかでも期待が大きいのは携帯電話・自動車・RFIDの分野だ。各種センサはじめTCXOやSAWフィルタ等、バンプの多いSMD部品にも最適。液晶パネルのバックライト用パワー(高光出力)LEDの実装技術としても注目が集まる。パワーLEDには熱を逃がすための多数のバンプがあるからだ。省エネ・長寿命という特長をもつLEDは、自動車ライトや信号灯にも採用されていく。蛍光灯にかわる室内照明としても注目され、その市場規模はきわめて大きい。電子荷札のRFIDも同様である。フリップチップボンダの競合メーカーは多いがTDKは電子部品・デバイスメーカーならではの経験とコア技術・ノウハウを、製品の企画・開発・試作・量産・サービスの各段階で生かしている。これが高信頼性・省スペース・低価格のフリップチップボンダを生み出し市場トップを維持する要因である。  

製造装置ビジネスは電子部品ビジネスと密接にリンクしている。市場ニーズを先取りし、ユーザーの視点から生産技術を提案できるのはTDKならではの強みである。先月・今月と2か月連続で装置を紹介したが、同業他社が決して追従できないコア技術を、装置というカタチに変え市場展開している。このような新しいTDKの香りのする商品を探求することも、生産技術部門の使命である。

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