テクの図鑑

vol.20 300mmウエハに対応したロードポート 半導体産業から評価された先進FA技術

300mmウエハに対応したロードポート

 

半導体産業から評価された先進FA技術 LSIチップを切り出すシリコンウエハの口径は、従来の200mmから300mmへとシフトしてきている。それとともに進行しているのは、製造ラインのさらなる自動化と、ウエハ汚染を防ぐためのミニエンバイロンメント方式の導入。TDKのFA技術は新時代を迎えた半導体産業分野でも大きく開花しようとしている。

局所クリーン環境を保つための重要装置

LSIに代表される半導体デバイスの製造は、ほとんどがクリーンルーム内でのプロセスだ。高集積化が進んで回路パターンは0.13ミクロン(μm)以下にまで微細化されるようになり、空気中のチリなどの微小パーティクルによるウエハ汚染対策は格段に厳しさを増している。しかし、工場全体のクリーン度をアップさせるには、大規模な空気清浄装置を設置するなど、巨額の設備投資が必要だ。このため近年は完全密閉したポッドにウエハを格納して、半導体製造装置間を次々と自動搬送していく手法が主流となってきた。つまり工場全体のクリーン度をあるレベル以下でとどめながら、ポッドと半導体製造装置の内部だけはスーパークリーンの状態に保つのだ。この手法はミニエンバイロンメント(局所クリーン環境)方式と呼ばれる。たとえていえば病院内に特別の無菌室を設けるようなものだ。  

半導体装置メーカーの業界団体であるSEMIによって規格化されたウエハ格納用ポッドのことをFOUPといい、FOUP内のウエハを半導体製造装置に出し入れするインタフェース部の装置をロードポート(Load Port)という。電子部品の自動装着機などで培ったFA技術と、DVDや磁気ヘッドの製造にも欠かせないクリーンルーム技術などをベースとして、TDKは半導体産業機器の分野でも確固たる地歩を築いている。SEMI準拠のFOUPにもいち早く対応、半導体メーカーや半導体装置メーカーから、高い評価を得ているのがロードポートTAS300である。

正確な位置決めとエアクッション機構

ミニエンバイロンメント方式により、高度なクリーン環境はウエハ周辺ですむようになった。しかし、FOUPと半導体製造装置間でウエハを出し入れする際には、パーティクルが侵入するおそれがある。また、FOUPは標準化されているとはいえ、インタフェース部の寸法が定められているだけだ。メーカーごとのFOUPのバラツキにより、ドッキング位置がずれたりするとドア開閉ができなくなる。また、このときFOUPがロードポートに衝突したりすると、パーティクルが発生してウエハを汚染してしまうことにもなる。このためロードポートにはパーティクル防止技術とともに、きわめて高度な位置決め技術も求められる。  

こうした問題を根本的に解決したのが、TDKのロードポートTAS300だ。独自の調整機構で正確な位置決めを短時間で遂行するとともに、精密気流制御技術によりパーティクルフリーのFOUP着脱を実現した。これはドアの開閉時に半導体製造装置側に均等なダウンフローの気流を正圧力で加え、外気からのパーティクルの侵入を防ぎつつ、FOUP内へのパーティクルの巻き込みも完全にシャットアウトする技術だ。さらに空気流はFOUPとドアがドッキングする際の衝撃をやわらげるエアクッションとしても活用されている。

シール性にすぐれた窒素封止ポッドも開発

ロードポートTAS300の高い信頼性と安定性は他社の追随を許さず、2000年には半導体メーカー各社から推薦ロードポートとして指定された。しかし、ウエハを汚染するのは空気中に漂う微小パーティクルだけではない。半導体プロセス工程直前にウエハ表面に形成されてしまう薄い自然酸化膜や、ごく微量の有機物などもデバイス特性に関係してくる。このためデバイス特性に影響を与えそうな工程においては、FOUP内の空気を窒素で置換して搬送する技術も求められる。これはウエハを一定期間ストックする場合にも重要な技術だが、従来のFOUP構造では確実な保存性は望めなかった。  

TDKではシール性にすぐれた密閉局所空間に製品を格納し、外気に1回も触れることなく保管・移動するという考え方を1986年頃に早くも提案している。これを具体化したのが1996年に開発した窒素封止ポッドCAVS300だ。吸水性のある製品や酸化しやすい性質のある製品の製造工程などでも利用され、大いにその真価を発揮している。300mmウエハに続いて、2010年前後には450mmウエハが登場する。半導体産業においては歩留まりの向上が最大の課題。TDKの生産技術開発センターは、その要求に高信頼性と先進スペックで応えている。

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