テクの図鑑

vol.15 ノイズ対策にもRFID用にも活躍 フレキシールドは2つの顔をもつ

ノイズ対策にもRFID用にも活躍

 

 フレキシールドは2つの顔をもつ ICのパッケージに貼ったり、回路基板の間に挿入したりするだけで、放射ノイズを大幅に抑制するのがTDKの複合電磁シールド材“フレキシールド”。まるで魔法の膏薬のようなフレキシールドには、これとは別の機能があり、“FeliCaフェリカ”携帯電話などのRFIDシステムでも活用されている。

低周波帯では高透磁率、高周波帯では高磁気損失

軟磁性体は、外部の磁界変化にすばやく追随して磁化の向きを変える磁性体である。しかし磁界の変化が速くなるほど、さまざまな磁気損失が現れる。この磁気損失を放射ノイズ除去に利用したのがフレキシールドである。放射ノイズが問題となる高周波帯に大きな磁気損失をもつので、デジタル機器の簡便かつ効果的なノイズ対策として多用されている。  

磁性材料における磁束(磁力線)の通しやすさのことを透磁率という。高透磁率の軟磁性体はあたかもスポンジが水を吸うように磁束をよく吸収し、微弱な外部磁界にも大きな磁化変化を示すのである。 

この高透磁率に着目したのがフレキシールドの新しい利用法だ。右のグラフのように、フレキシールドはRFIDが使用される13.56MHz帯においては高透磁率(ハイμミュー)・低磁気損失(ローロス)という特性をあわせもつ。つまり、この帯域では磁気損失をほとんど受けることなく、すぐれた磁束集束効果が期待できる。したがって、RFID(Radio Frequency Identification)システム用のアンテナ感度向上用として願ってもない材料となるのだ。

“FeliCa”携帯電話にも不可欠

最近、非接触型ICカード“FeliCaフェリカ”を搭載した携帯電話が登場した。読み取り機にかざすだけで支払いがすむ電子マネード“Edyエディ”の機能をもつ携帯電話だ。JRのIC乗車券“Suicaスイカ”や“ICOCAイコカ”などにも利用されているRFIDシステムという無線通信技術の1種である。  

RFIDシステムは、ICチップとアンテナを内蔵したRFIDタグ(無線タグ)と、情報を読み書きするためのリーダ/ライタからなる。各種方式があるが、現在、日本での主流は、ループアンテナを通して磁束をやりとりする電磁誘導方式である。ただ、この方式は近距離での応答性にすぐれるが、金属面の影響を受けやすいのが弱点だ。携帯電話の場合、RFIDタグが金属面(バッテリケースやプリント基板など)に近接しているため、情報を乗せた磁束を打ち消すように、金属面から反作用磁束(渦電流による)が発生し、読み書きエラーを起こしてしまうのだ。  

そこで活躍するのがフレキシールドである。FeliCaでは13.56MHzの周波数が使われている。この周波数帯においてフレキシールドは高透磁率・低磁気損失という特性をもち、すぐれた磁束集束効果を発揮する。このため近接する金属面の影響を大幅に減少させ、磁束をアンテナに通過させることができるのだ。

透磁率を均一化する高度なシート化技術

フレキシールドは高透磁率の軟磁性材料を微細な箔片とし、これを樹脂と混合してプレス機にかけてシート状に加工される。簡単なようだが、厚みや透磁率のバラツキをなくして均一化するには高度な技術が求められる。TDKでは材質・厚さ・形状など、用途に合わせた豊富なタイプを取り揃えている。なかでもIRL02・IRL03シリーズは、100MHz〜10GHzの周波数帯において絶大なノイズ抑制力を示し、また13.56MHzのRFIDシステム用としてもすぐれた特性を発揮する。  

しかし、携帯電話などに搭載するRFIDタグ用となると、高特性とともに、さらなる薄型化が求められる。そこで製造ラインの高精度化など、さまざまな先進技術を投入して新開発したのがIRL04だ。RFIDタグとリーダ/ライタ間のデータ伝送最大距離を、従来シリーズよりも約50%も向上させることに成功した。TDKではこのハイスペックを50μmの薄さで実現するIRL-X(仮称)の開発も進めている。

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