テクの図鑑

vol.16 物流・IT革命を支援する RFID用フェライト

物流・IT革命を支援する RFID用フェライト

 

自動改札機のIC乗車券、FeliCaフェリカ携帯電話、Edyエディカードなど、小型ICチップと無線通信技術を利用したRFIDシステムが、身の回りで急速に普及しはじめている。RFIDシステムの成否の鍵となるのは、どんな環境にも安定動作させる技術。TDKのフェライト技術がここでも威力を発揮する。

無限の可能性をもつ磁性セラミックス

フェライトは酸化鉄を主成分とする磁性セラミックスである。精製された粉末原料を成型・焼結すると、微細なフェライト結晶粒子が集まった多結晶体となる。結晶粒子は磁区と呼ばれる微小領域で構成され、磁区どうしの境界は磁壁という。軟磁性体であるソフトフェライトは、外部磁界が加わると磁壁が移動して磁化され、外部磁界を取り去ると元の状態に戻る性質をもつ。高周波の磁界変動にもフレキシブルに追随するので、高周波用トランスコアなどに不可欠なのだ。  

フェライトは無限の可能性をもつ電子材料といわれる。基本組成はもちろん、わずかな添加物によっても特性がガラリと変わってしまうからだ。添加物は主に結晶粒子の境界である粒界に析出する。このためフェライト製造にあたっては、高度な粒界制御技術も求められる。  

透磁率や磁気損失といった特性は、周波数によって大きく変化する。マンガン・亜鉛フェライトは比較的低周波領域、ニッケル・亜鉛フェライトは高周波領域で使われる。フェライトの材質が分類困難なほど多種多様にわたるのは、使用周波数や目的に応じた最適材質を選択しなければならないからだ。これはRFIDシステムの安定動作においてもきわめて重要になる。

近接金属がつくるデッドゾーン

JRのIC乗車券SuicaスイカやICOCAイコカ、電子マネーとして使われるEdyエディカード、Edyエディ機能をもった携帯電話などは、FeliCaフェリカと呼ばれるRFIDシステムを利用したものだ。FeliCaフェリカはカードや端末機に内蔵されたRFIDタグ(無線タグ、ICタグ)のアンテナと、リーダ/ライタのアンテナとの磁束のやりとりで情報を読み書きする電磁誘導方式である。RFIDタグは次世代バーコードとも呼ばれるが、光学式の従来のバーコードと違い、書き換えができるという特長をもつ。  

電磁誘導方式の弱点は、アンテナに金属が近接したりすると、金属に渦電流が流れて反作用磁束が生まれ、情報を乗せた磁束が打ち消されてしまうことだ。そこで携帯電話ではRFIDタグの背面にフレキシールドが使われることは前号で紹介したが、リーダ/ライタ側にも同様の対策が求められる。リーダ/ライタ側に金属が近接していると、交信エリアに見えないデッドゾーンが生まれ、信号レベルが著しく低下したりするのだ。この問題を解決するのがTDKのRFID用フェライトである

複雑形状の超小型コアも加工提供

RFIDシステムで最も重要なのは、どんな環境においても安定動作させることである。リーダ/ライタの置かれる場所は、さまざまだからだ。また、大型荷物や製造部材などのタグ情報を読み取るための大型のリーダ/ライタもあれば、ハンディなリーダ/ライタもある。TDKでは蓄積したフェライトを生かし、高透磁率のマンガン・亜鉛系およびニッケル・亜鉛系の焼結フェライト、微細なフェライトパウダーを樹脂混合させた樹脂フェライトなど、4種の材質をラインナップ、多様なRFIDニーズに対応している。  

TDKのRFID用フェライトは、アンテナ特性の改善ばかりでなく、アンテナコア用としてもすぐれた材料である。とりわけ樹脂フェライトは複雑な3次元構造の超小型コアの成型も可能にする。フェライト材の製造技術はもちろん、アンテナ特性の向上を図るための高度な設計対応力や加工技術をあわせもつのがTDKの強み。焼結フェライトと樹脂フェライトを組み合わせたハイブリッドタイプの開発なども進めている。

TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです

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