テクの図鑑

vol.12 驚異的な省スペース効果 小型スイッチング電源

驚異的な省スペース効果 小型スイッチング電源

 

高速・高機能化が進行するホームネットワーク機器、産業機器、医療機器などの電源部の設計には、スイッチング電源のさらなる小型・薄型・軽量化が求められている。 TDKのRTWシリーズは従来製品の約1/2の体積にまでコンパクト化した画期的な新製品だ。

直流にもクォリティがある

電子機器はエネルギーなしには動かない。バッテリ駆動のモバイル機器などは別として、家庭やオフィスの据え置き型の電子機器はAC(交流)100Vの商用電源からエネルギーを得ている。しかし、電子回路は直流駆動であるため、交流を直流に変換する装置が必要となる。最も身近でおなじみなのはACアダプタだ。

簡易型のACアダプタは変圧・整流・平滑という3つの回路からなる。まず電源トランスによって100Vから10V程度にまで下げられた交流は整流回路に送られる。整流を受け持つダイオードは電流を一方向しか通さない機能をもつため、交流の谷の部分がカットされ、山の部分のみが連なる脈流となる。しかし、脈流のままでは電子機器は駆動できないので、電解コンデンサを用いた平滑回路が設けられている。脈流の山と山の間の部分は電流が流れていないが、このとき電解コンデンサに蓄えられた電気が放電して山と山の隙間を埋める。その結果、脈流はなだらかな直流となるのである。  

とはいえ、このままではリップル(さざ波)電圧というものがかなり残り、完全に平坦な直流にはならない。そこで、一定電圧の安定した直流を必要とする電子機器などにはスイッチング電源が使われるのだ。

スイッチング電源は電子機器の心臓部

電子機器の電源部を心臓にたとえるなら、回路に供給される直流電流は血液である。心臓が清浄な血液を送り続けなければ健康を保てないように、電子機器の電源部もすぐれた特性が要求される。そこでますます活躍の場を広げているのがスイッチング電源である。

スイッチング電源ではダイオードでまず整流してからトランスで電力変換するという方式を採用している。しかし、トランスの原理はコイルの磁束変化を利用したものなので、直流では電力変換できない。そこで、スイッチング電源ではトランジスタのスイッチング動作によって、直流を高周波のパルス電圧に変えるという方法がとられている。パルス電圧が印加されるたびに磁束変化が起きるので、トランスによる電力変換が可能になるのである。トランス2次側でこれをさらに整流・平滑化すると一定電圧の直流となるのだ。  

いわば直流を切り刻んでトランスに送り、これを2次側でつなぎ合わせて直流を得るというユニークな発想から生まれたのがスイッチング電源。出力電圧の変動に対しても、制御回路によってパルス幅を制御することで対処しているので、きわめて安定した直流電流が得られる。

記録を塗り替えたRTWシリーズ

高周波パルスを利用するスイッチング電源のトランスコアには、高周波でもコアロスの少ないフェライトが利用できるので小型・軽量化に有利である。エネルギー変換効率も80〜90%と高い。さらなる小型化を阻む要因として発熱問題がある。トランスやチョークも発熱するが、ほとんどはスイッチング動作するトランジスタからの発熱である。このため、局部的なヒートスポットができないような最適部品配置とともに、空気の流れなども利用した高度な放熱設計が必要とされるのだ。  

TDKでは先進の熱解析シミュレーション技術と3D-CAD技術を統合した独自の三次元実装設計システムを確立。自然空冷方式による業界最小・最軽量のモデルとして実現したのがRTWシリーズだ。

厚さわずか22mmの50Wタイプは体積比で従来のRKWシリーズの57%、100Wタイプでも50%という驚異的な小型化を達成した。通信機器市場で標準となっている1Uラック(収納高さ44.45mm)に、50Wタイプはもちろん、厚さ25mmの100Wタイプも余裕をもって納まり、設計自由度を大きく高める。TDKではトランスのコア材料や形状、巻線技術の改良などにより、さらなる小型・薄型・軽量化を目指している。超薄型電源や通信機能をもたせたインテリジェントなスイッチング電源というのも夢ではない。

TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです

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