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GRAIN30 ゆがむ結晶格子

ゆがむ結晶格子

交流磁界による損失発生機構を探る旅も、ついにμの終着駅まで来てしまったわけだが、損失の要因となる"赤字"路線はまだまだいろいろある。 そこで、次には、磁壁共鳴や自然共鳴と並んで残留損失のひとつに数え上げられる「拡散・余効損失」の発生機構をのぞいてみることにしよう。「拡散」とか「余効」といった言葉の意味するところは、実際の風景を眺めていただくうちにおのずと明らかになるはずなので、とりあえずは無視していただいてかまわない。

交流磁界による損失発生機構を探る旅も、ついにμの終着駅まで来てしまったわけだが、損失の要因となる"赤字"路線はまだまだいろいろある。 そこで、次には、磁壁共鳴や自然共鳴と並んで残留損失のひとつに数え上げられる「拡散・余効損失」の発生機構をのぞいてみることにしよう。「拡散」とか「余効」といった言葉の意味するところは、実際の風景を眺めていただくうちにおのずと明らかになるはずなので、とりあえずは無視していただいてかまわない。

この立体は、8等分された単位胞ブロックのひとつを表わしている。やや緑がかった青銅色で塗った少し大きめの球体はB格子に納まる金属イオンで、コーナーのA格子に納まる金属イオンは濃い藍色で示した。大きな水色の球体は酸素イオンである。各イオンの動きは、上方を向いていたHeff方位が右横に変わるのに合わせて、縦方向に伸びていた結晶格子が菱形にひしゃげる(横方向に伸びる)ケースを例にとった。 そこで、ひときわ目立っているのが、ブロックが横方向に伸びるのに合わせて、左隅の中央部から下方に向けて大きく位置を変えたワインレッドの球体であるが、これは、本来なら居てもらっては困る不純物原子という見立てである。 不純物原子としては、自ら居心地のいい席に移るのだ、と言いたいところだろうが、ご覧のとおり、格子の間にはさまった不純物原子は、結晶格子が伸びたり縮んだりするたびに邪険に扱われる。早い話、邪魔にならない位置にはじき出されるのである。追い出されるのか、自発的な移動かは、ともかく、Heff方位の転換に合わせて、より安定した位置に身を転じる不純物原子のこの挙動により、磁気モーメントの方位は不純物が介在しない場合よりHeff方位に強く固定されることになり、この作用をモデル上に描くと、結晶磁気異方性エネルギーWkのくぼみになるというわけである。 不純物原子が、Wkのエネルギー障壁をへこませるということは、異方性磁界HAと同じく、そのへこみの分だけ、磁気モーメントをHeff方位に安定化させる機能を発揮していることになるが、しかし、この"箸置き"が、じつはとんだ食わせ物であることが次節で明らかになる。

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