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[第1回 地球の放熱システムとHEV用 DC-DCコンバータ] 低気圧は地球の空調ファン

風雨をもたらす低気圧は嫌われ者だが、実は大気の過剰な熱を上空へ運び、宇宙へと逃がす地球の空調ファンの役割をしている。もし低気圧がなかったら大気の温度は上昇し、地球は生物の住めない環境になってしまう。

地球規模の大気循環システム

2007年に打ち上げられた月探査衛星「かぐや」は、月面のようすを鮮明なハイビジョン画像で送り続けている。月には大気がないので、月面から見た空は暗黒だ。風も吹かないから太古のクレーターもそのまま、約40年前のアポロ宇宙飛行士たちの足跡も、当時のままに残されているはずだ。  

地球には大気があり、東向きに自転している。このため、赤道地帯の貿易風、中緯度地帯の偏西風、極地の極風という南北両半球それぞれ3段構えの大気循環システムがたえず作動し、地球をぐるりと一周する巨大な風系をつくっている。帆船時代の外洋航海にはこの風が利用された。コロンブスの探検隊は、貿易風に乗って西インド諸島に上陸し、帰路は偏西風を利用してスペインに戻った。  

地球が太陽から受け取る熱エネルギーと、地球から宇宙へと放出される熱エネルギーは同量だ。そうでなければ、地球はどんどん熱が溜まって灼熱化するか、あるいは熱不足になって氷の星になってしまう。ただし、地球は丸いので、太陽から受け取る熱エネルギーは熱帯では多く、極地方では逆に少ない。大気の大循環は、熱帯地方の高温の大気と、極地方の低温の大気を攪拌し、温度差を小さくする空調システムの役目をはたしているのだ。

もしも低気圧がなかったら?

高気圧とは周囲より気圧の高いところ、低気圧というのは周囲より気圧の低いところと学校で教えられる。しかし、これではなぜ高気圧と低気圧が存在するかわからない。低気圧とは大気の渦巻きであり、これは温度差のある大気を攪拌をする空調ファンのようなものと考えたほうがわかりやすい。地球の空調システムで重要なのは低気圧であり、高気圧というのは低気圧を除いた残りの部分の大気のことなのだ。  

たとえば、中緯度地帯で南の暖気団と北の寒気団が出会うと前線が生まれ、やがて両気団は二つ巴のように渦を巻く。これが温帯低気圧だ。一方、赤道付近の海上で生まれる熱帯低気圧は前線を伴わない。強い日射によって海水温度が上がり、大量の水蒸気を含む上昇気流が、巨大な渦を巻いたのが熱帯低気圧で、発達すると台風やハリケーンとなる。熱帯低気圧もまた熱くなった海水温度を下げる冷却ファンの役割をしている。実際、台風の通り過ぎた後の海水温度は低くなる。  

化石燃料の大量消費により地球温暖化が進めば、地球の空調ファンは活発に作動し、台風の発生数が増えるのではないかとも予測されている。低気圧や台風は時として風害や水害をもたらす。だが、これを悪者扱いにするのはお門違いというものだ。地球の大気が生物の住めるほぼ一定範囲の温度を保っているのは、低気圧や台風をファンとする地球の空調システムのおかげなのだ。

DC-DCコンバータの高効率化と発熱ロス対策

電子機器は多かれ少なかれ発熱をともなう。マイクロプロセッサなどの半導体や大電流をあつかう電源においてとくに著しい。パソコンを駆動するとファンが回転するのも、内部にたまる熱を放出して誤動作やシステムダウンを防ぐためだ。  

走る電子機器と呼ばれる昨今の自動車では、電装機器の発熱ロスは燃費を悪くする。HEV(ハイブリッド車)ではモータ駆動に高電圧(200〜300V)のバッテリが用いられるが、他の多くの電装機器は低電圧(12Vなど)で作動するので電圧変換する必要がある。その役割を担うのがDC-DCコンバータだ。パワーウインドウやパワーシート、カーオーディオやカーナビなど、電装機器の消費電力も急増し、バッテリの負担が大きくなっている。さらなる省エネとバッテリ負担の軽減は、HEVやFCEV(燃料電池車)などの重要課題だ。  

最適電子部品の選択、先進の熱解析シミュレーションを駆使した放熱設計などにより、高効率・低ノイズ・高信頼性を達成したのがTDKのHEV用DC-DCコンバータだ。DC-DCコンバータの発熱ロスのひとつにトランスのコアロスがある。TDKでは25℃〜120℃という広い温度範囲で低損失特性を保つフェライトPC95材を採用してコアロスの大幅軽減も実現した。素材技術、プロセス技術、シミュレーション技術というTDKのコアテクノロジーは、省エネ時代の自動車でも、ますますその真価を発揮している。

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