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走行支援道路システム(AHS)とは?わかりやすく走行支援道路システム技術を解説

事故防止や交通渋滞の緩和を目的とするITS(高度道路交通システム)により、道路も自動車もインテリジェントな進化を遂げようとしている。AHS(走行支援道路システム)やASV(先進安全自動車)には、高度なセンサ技術ほか、ドライバを支援するためのモータ、アクチュエータが不可欠だ。

走行支援道路システム(AHS)により死亡者数は減少、自動車事故件数は上昇

最近の自動車には環境改善や省エネ、無線通信システムとの融合などを目指した数々の先進技術が投入されている。だが、何より最優先の課題となっているのは安全性の向上だ。日本の自動車事故による死亡者数は1990年頃から減少に転じているが、事故件数そのものはじわじわと上昇している。事故原因の半分以上は他の自動車や歩行者、道路状況などをドライバが見誤ったり、見落としたりする認知ミスによるもの。これに衝突などの予測を誤る判断ミス、そしてハンドルやブレーキペダルなどの操作ミスが続く。 高齢化社会を迎えつつある日本では、2010年には60歳以上のドライバの比率が全体の4分の1を占めるようになるため、安全性向上のための技術開発が急務となっている。そこで、こうした知覚・判断・操作ミスを補償するAHSやASVの研究が精力的に進められている。AHSは無線通信技術により道路と自動車が情報のやりとりをすることにより、事故回避や交通渋滞緩和を図ろうというシステムだ。AHSでは出会い頭や右折時の衝突、急カーブでの事故、車線逸脱や歩行者衝突といった事故を防止するためのさまざまな支援技術が検討されている。  

たとえば、見通しの悪いカーブの先で渋滞が起きていたり、落下物があるときなど、ブレーキが間に合わずに追突するという事故がしばしば起きる。  AHSの1つである前方障害物衝突防止支援サービスは、カーブの先に設置されたセンサにより、前方の状況をあらかじめドライバに知らせて事故を回避するシステムだ。

走行支援道路システム(AHS)と同等に重要な先進安全自動車(ASV)

無線通信技術によりITS社会の道路はドライバや歩行者の安全を守るインテリジェントなインフラとなる。AHSとともにITSの基幹技術とされるのがASV(先進安全自動車)だ。AHSが道路側から情報を送ってドライバを支援するのに対して、ASVは自動車そのものの安全性を極限まで高めることを目標としている。  ASVのキーテクノロジーの1つとなるのもセンサ技術である。暗闇の中の歩行者や停止車両、落下物などを把握したり、道路の凍結や水膜といった路面状況を把握するために、赤外線センサ、ミリ波センサ、レーザレーダなど、各種の先進センサ技術が応用される。  

予防安全・事故回避を目的とするASV技術として、車間監視システムや死角監視システムがある。一般にドライバは前方ばかりに注意が向いて、後方や側方から接近する自動車に気づかず、衝突や接触事故を起こすことが多いからだ。こうした事故を防止するためにTDKが開発したのがSRR(ショートレンジレーダ)だ。24GHz帯の準ミリ波を利用しているので、赤外線レーダや超音波レーダなどとくらべて雨や雪に強く、また自動車ばかりでなく、バイクや自転車、歩行者なども数十cmの近距離で検知するのが特長。しかも検知角度が広く設定されているため、広範囲の障害物を検知でき、前方・側方・後方での車間支援、衝突防止、死角事故回避、車線変更アシストなどに威力を発揮する。準ミリ波の電波を利用しているため壁などを通したセンシングも可能で、防犯・セキュリティシステムなどへの応用も期待されている。

自動車の安全性向上に必要なドライブ・バイ・ワイヤ技術

自動車の安全性向上のため、これから急速に進展すると予測されるのはドライブ・バイ・ワイヤ技術だ。従来の自動車ではハンドルやブレーキなどの操作は、機械運動によって伝達されていたが、これらを航空機のようにワイヤ(信号線)によって電動化しようという技術だ。電動化によってドライバの運転補助や自動停止なども可能となり、安全性は飛躍的に向上するばかりでなく、AHSなどとの連携により、ASVの究極の目標とされる完全自動運転も実現する。 パワーウインドウやパワーミラーなど、現在の自動車には30個〜100個前後のマイクロモータが搭載されている。各種の電動システムがドライバを支援するASVにおいては、マグネットを利用したマイクロモータが今まで以上に多用されていくとみられている。このモータには、コストパフォーマンスにすぐれるフェライトマグネットが利用されている。世界最高レベルの磁気特性を誇るのがTDKのFB9シリーズである。TDKでは先進の材料技術、焼成技術の投入により、このFB9シリーズを上回る次世代フェライトマグネットも開発中だ。世界の磁石生産量(重量)の90%以上はフェライトマグネットであり、その最大用途はモータである。 マグネットの高性能化によるモータの小型化は、自動車の軽量化をもたらし、燃費向上を通じて多大な省エネ効果をもたらす。TDKの次世代フェライトマグネットが採用されれば、日本国内で年間約10万トンのCO2が削減できると計算されている。資源枯渇の心配がなく、環境に与える負荷も小さなフェライトマグネットは、きたるべきITS社会においてもますます活躍することになるだろう。

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