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グローバルで注目される自動車省エネ技術の今後と課題

グローバルで注目される自動車省エネ技術の今後と課題 

 

カーエレクトロニクスが本格導入された最初の自動車部品は、電子式燃料噴射装置。ガソリンの節約と排気ガスのクリーン化に大きく貢献した。以後、省エネや環境負荷低減はもちろん、安全、快適を求めて、カーエレクトロニクスは活躍の場を広げてきた。

自動車に省エネ技術が注目され出した歴史背景

自動車技術は利便性・安全性の追求ばかりでなく、環境対策・省エネ性という社会的要請にもリードされ、めざましい進歩を遂げてきた。自動車大国の米国において、自動車の排出ガスによる大気汚染が深刻な都市公害問題になったのは1970年代である。同じころ日本の都市でも光化学スモッグの被害が頻発するようになった。  

米国では1975年に有名なマスキー法が施行された。排出ガス中の有害成分をそれまでの約10分の1にまで削減するという厳しいもので、当時は技術的に実現不可能とまでいわれた。この基準を満たすクリーンエンジンを世界に先駆けて開発したのは日本の自動車メーカーだった。環境対策と省エネ性にすぐれた日本の自動車は、その後のオイルショックの追い風も受け、世界市場を席捲することになったのである。  

1980年代になるとCO2濃度の増大による地球温暖化という新たな問題も浮上してきた。CO2は地表から放射される赤外線(熱)を吸収するため、地球がいわばふとんをかぶったような状態になって温暖化が進行する。もとより石油資源はいつか枯渇し、地球環境の自浄能力にもかぎりがある。ハイブリッド車や燃料電池車、CNG(圧縮天然ガス)車など、ポスト石油時代のクリーン・カーの開発と普及、排出ガス中の有害成分やCO2の削減、そしてさらなる省エネは、技術先進国に課せられた使命だ。

自動車の省エネ技術に重要なDC-DCコンバータ

EUでは2008年までに、走行距離1kmあたりのCO2排出量を140gにまで低減することを目指している。もちろん、ハイブリッド車や燃料電池車などの普及を見込んでの規制だ。ハイブリッド車には、エンジンで発電した電気エネルギーをバッテリに蓄え、バッテリで走行モータを駆動させるシリーズ方式、エンジンとモータ双方の駆動力を活用するパラレル方式、シリーズ方式とパラレル方式をあわせもつシリーズパラレル方式がある。いずれも補機バッテリに効率よく電圧変換するDC-DCコンバータが必要だ。高耐熱性チップコンデンサ、中高耐圧チップコンデンサをはじめとする積層チップ部品技術、また電源回路技術やトランス技術など、DC-DCコンバータに関する技術のすべてを保有しているのがTDKの強みである。 1990年代に初めて登場したハイブリッド車に採用されたのもTDKのDC-DCコンバータだ。DC-DCコンバータのエネルギー変換効率の向上のうえで、とりわけ重要なのはトランスである。トランスのコア材料としては、飽和磁束密度が高くコアロスの低いMnZn系フェライトが用いられる。MnZn系フェライトは温度依存性をもち、コアロスが極小となるのはある温度帯にかぎられているが、自動車用DC-DCコンバータは−40〜+125℃という広い温度範囲で使われる。そこで、TDKが開発したのが、広温度範囲において低コアロスを実現したPC95材。従来材(PC40シリーズ)とくらべて、トランス総損失を30〜40%も低減、ハイブリッド車や燃料電池車において、大幅な省エネ効果をもたらす画期的なフェライトだ。

CANケーブルで結ばれるECU(コントロール・コンピュータ)には、ノイズ除去用のコモンモードフィルタが多数使われる。電流センサはバッテリのエネルギーを効率よく利用するのが目的。

自動車の省エネ技術を支えるのはマグネット

自動車は走る・曲がる・止まるを基本機能とするパワートレイン系の上に、ワイパーやヘッドライト、パワーウインドウやパワーミラーなどのボディ系電装、そしてカーナビやETC端末などの情報通信系電装を乗せて走るエレクトロニクス機器だ。近年は多数のセンサから送られる信号をそれぞれのECU(コントロール・コンピュータ)が処理し、CAN-BUSなどの車載LANによって安全・快適な走行を維持するようになっている。しかし、ECUを結ぶケーブルはノイズの伝送路にもなるため、車載LANには高度なノイズ対策が必要になる。 TDKの持ち味は、CAN-BUS用コモンモードフィルタをはじめとする各種ノイズ対策部品のみならず、電波暗室を利用したEMCセンターによるシステム評価など、トータルなEMCソリューションを提供できるところにある。小型モータやアクチュエータ、各種センサなど、すべての電装系において、マグネットの果たす役割も大きい。とりわけハイブリッド車や燃料電池車の走行モータとしては、大きな磁気エネルギーをもつネオジムマグネットが欠かせない。TDKのNEOREC53シリーズは、微量添加物や結晶の微細構造制御技術などにより、世界トップレベルの高磁束密度・高保磁力を達成したネオジムマグネット。高温環境の自動車に最適な高Hc(保磁力)タイプなど、用途に応じた豊富なタイプをラインナップしている。ただ、磁気エネルギーは大きいものの、ネオジムマグネットには錆びやすいという性質がある。そこで、TDKでは従来の金属めっきよりも安価で防食性にすぐれた表面処理法(MDコート)も新開発。ATF(自動変速機)オイルのかかるハイブリッド車用モータのマグネットとして最適だ。  

2010年頃の自動車には1台あたり1.3kgのネオジムマグネットが使われると予測されている。電動パワーステアリングやアクチュエータや各種センサなど、マグネット関連の電装機器のビジネスチャンスも大きく広がっている。

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