コンデンサ・ワールド

第4回 電子回路の隠れた主役 コンデンサの機能(3)「共振回路と発振回路」

電荷を蓄えることと、周波数の高い交流ほど通しやすいというのはコンデンサの基本性質。ところが、高周波領域になると、コンデンサは別の顔をあらわにしてきます。
コンデンサ内部の微小なインダクタ成分が優勢となり、コンデンサ単独でも共振回路のような振る舞いを示してくるからです。

コンデンサとインダクタ(コイル)を組み合わせた共振回路は、通信・放送機器の同調回路としても欠かせないものです。共振回路のしくみの説明の前に、まず電波(電磁波)と無線通信の技術史を振り返ってみましょう。

電磁波の立証にヒントを与えたライデンびんの電気火花

ダイポールアンテナはコンデンサの電極を開いた構造

ヘルツの実験装置は送信側の電極ギャップが送信アンテナとなっています。これはコンデンサの電極と同じ働きをします。つまりコンデンサはアンテナのルーツでもあったのです。たとえばダイポールアンテナはコンデンサの2枚の電極を水平に開いたものと理解できます。テレビ電波の受信アンテナ(八木アンテナ)も、基本的にこのアンテナと同じです。ちなみにアンテナの語源は昆虫の触角です。

コンデンサとインダクタを組み合わせた同調回路

マルコーニの初期の無線通信機も原理的にヘルツの実験装置と同じです。火花放電にともなう電磁波をノロシのように断続的に発生させて信号を送っていたのです。ラジオのそばで電子ライターを着火するとブツンという雑音が入るのも、電磁波の発生によるものです。こうした火花放電に伴って発生する電磁波は、さまざまな周波数成分が混じったホワイトノイズと呼ばれるものです。無線通信への関心が高まるにつれ、混信問題の解決や通信距離の延長のために、特定の周波数を利用した無線通信が模索されるようになり、そうした研究の中から考案されたのが、コンデンサとインダクタ(コイル)を利用した同調回路や発振回路です。
まずは同調回路のほうから説明いたします。同調回路にはコンデンサとインダクタを直列接続したタイプと並列接続したタイプがあります。前号でご紹介したように、コンデンサは周波数が高い交流ほど通しやすく、インダクタは周波数が高い交流ほど通しにくいという正反対の性質をもちます。ところが、下図のように両者を組み合わせると、それぞれの周波数特性の曲線が交わる周波数においては、まるで“ウマが合う”ように“共振(共鳴)”して、インピーダンス(交流における抵抗値)が急激に変化します(直列接続の場合は下がり、並列接続の場合は上がる)。これを利用したのが、ある特定の周波数(共振周波数)を選択する同調回路です。

コンデンサは自己共振するため、高周波でインピーダンスが下がらない

周波数の高い交流ほど通しやすいというのはコンデンサの基本的な性質です。しかし、これは理想的なコンデンサでいえることで、現実のコンデンサは高周波領域では奇妙な振る舞いを示すようになります。というのも、現実のコンデンサは抵抗成分やインダクタンス成分をもっているからです。
たとえば、積層セラミックチップコンデンサには誘電体が分極するときに生じる誘電損失や内部電極がもつ抵抗成分とインダクタンスがあります。電解コンデンサではアルミ箔や陰極の電解質、リード線がもつ抵抗成分とインダクタ成分などがあげられます。これらをそれぞれESR(等価直列抵抗)およびESL(等価直列インダクタンス)といいます。高周波領域でコンデンサを使うと、回路図にはないESRやESLによる影響が顕在化してきます。これは高周波フィルタやノイズ対策を考えるうえでもきわめて重要な視点です。
抵抗成分のESRはエネルギー損失となるので、大きな高周波電流を流すときには、できるだけ小さいことが望まれます。ESLは高周波領域でコンデンサの振る舞いに大きな影響を与えます。前述のコンデンサとインダクタを直列接続した共振回路と同じように、静電容量CとESLが直列共振を起こします。下図・下のようにある周波数を境にしてインピーダンスの低下が上昇に転じてしまうのです。その境目となる共振周波数はSRF(自己共振周波数)とも呼ばれます。SRF以上の周波数ではESLが支配するインダクタとして振る舞います。
積層セラミックチップコンデンサは、誘電体セラミックスと内部電極、端子電極の金属からなるシンプルな構造のため、ESRおよびESLは他のコンデンサに比べ小さいという特長があります。今日、世界で生産されるコンデンサの80%以上を積層セラミックチップコンデンサが占めているのも、小型・軽量で信頼性が高く、高周波特性にもすぐれるなど、きわめてバランスのよい性質をもっているからです。

ノイズ除去効果に深く関わるコンデンサのESL

ESLが大きいコンデンサをパスコンに使うと、コンデンサのインピーダンスが下がらず、ノイズを取り除くことはできません。ノイズは高周波電流なので、インピーダンスが高いと高周波電流がコンデンサを流れないため、ノイズ電流を還流することができないからです。
一般に高周波パスコンには積層セラミックチップコンデンサを使用しますが、昨今のデジタル回路の高速化によってノイズの周波数も高周波化しており、下図に示すようなよりESLの小さなコンデンサをノイズ対策に使用するケースが増えてきています。

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