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2. 油圧から電動へ進む車載ユニット

カー・エレクトロニクスと聞いた時、何を思い浮かべるだろうか。カーナビやカー・オーディオなどの電装品がまず真っ先に目に浮かぶ、というのは最も自然な反応だろう。

 しかし、実際のカー・エレクトロニクスの中心部は、ふだん目に付くキャビン周りのユニット以上に車体の中に隠されているのだ。最近のクルマはさながら"走るコンピュータ"と呼べるくらい、数多くの電子制御装置(ECU)を導入している。エンジンの燃焼制御だけでなく、目に見えるインジケータ表示はおろか、車体の隅々まで電子的な計測・制御の網を張り巡らしている。そこで使われる電子部品の量も必然的に多くなる。寒暖の差の激しい屋外で活躍するクルマだけに、電子部品に課せられる動作条件は家庭用に比べてはるかに厳しい。

油圧から電子に置き換わる制御系

現在のクルマにとって燃費の改善はエコロジー対策の側面から避けては通れない。燃費向上の切り札はなんといっても車体を軽くして燃料消費を削減することにある。これは排出ガス規制のクリア目標の達成にもつながる。車重を軽くするには外装に使っている鋼板を薄くしたり、プラスチックで代替できる部材は転換したりと、さまざまな工夫を加えてきた。
 現在残されている課題は、油圧で制御している部分を段階的に電気駆動に置き換えていくことと、各種の電子制御装置(ECU)をエンジンルームに集中して電気系統の配線を束ねているワイヤーハーネスを簡素化することだ。
 油圧系の駆動装置は重いので、これを順次電動系に交換することは至上命題となっている。現在はまだ油圧系でなければコスト的に見合わない部分もあるのでハイブリッドの状態だが、オール電動化もそう遠くはない。

熱・振動・腐食に対する厳格な条件

CAN-BUS用コモンモードフィルタ New ACTシリーズ

ECUがエンジンルームに集中していくにつれ、ECUに搭載される電子部品に要求されるスペックも厳しくなる。まず熱の問題。一般家庭用品なら使用環境温度範囲は0℃〜60℃程度だが、屋外利用が前提で炎天下から氷点下まで活動範囲が及ぶクルマの場合、-40℃〜150℃と格段に広い。しかも動作時には振動も加わる。あらゆる気象条件の中で走行するクルマにとって腐食に強いという条件も不可欠になる。電子化に伴って電磁ノイズの問題も浮上している。
 エンジンルームに集中したECU内の部品や配線が電気的なノイズにさらされることになる。ノイズをなるべく出さない、ノイズから電子回路を守る工夫が必要になる。しかも電子部品は熱に強く、振動に耐え、しかも腐食に強い特性が求められる。

CAN-BUS用コモンモードフィルタ
New ACTシリーズ
 

 一般にCAN-BUSと呼ばれる車載LANの信号伝送を安定化するコモンモード・フィルタもその一例だ。CAN-BUSとはECU間やECU-アクチュエータ、ECU-センサの間を結ぶ車載LANの一種で、コモンモード・フィルタはその差動伝送信号からノイズを除去する。自動車用に開発された製品で、エンジンルームに適した耐熱性(-40℃〜150℃)と耐振性を備えている。ECUなどの電子回路の動作電圧を安定化するチップコンデンサにも自動車仕様の製品がある。−40℃〜150℃の動作温度範囲をカバーし、耐振性もクリアする。TDKはこの分野をリードする役割を果たしている。

増殖するモーター駆動部品

モータ用フェライトマグネット FB9材

電動化の過程で急増しているのがモータの数だ。気が付くだけでも、パワー・ウインドウ、ドア・ミラー、ワイパー、ウォッシャーなどなど。現在のクルマには百数十個の小型モーターが使われていると言われる。
 小型モータには保磁力が強く残留磁束密度の高いフェライト磁石が不可欠な部品だ。自動車用の小型モーター用のフェライト磁石は性能だけでなく、屋外にさらされる自動車の環境に合わせて耐熱性と耐食性(腐食に強い性質)も強化している。この部分にもTDKのフェライト技術の蓄積が活きている。
 モーターは便利な半面、電子回路にとってはノイズ源となる。電動化はある面ではノイズ源を拡散させる動きとも言える。そこでモータの側にもノイズを出さない工夫がいる。そのために使われるのがバリスタと呼ばれる部品だ。
 バリスタはある値を超える電圧がかかると、抵抗値が急激に下がる事を利用し、高電圧の電流をアースに流す事ができる。これによって突発的なノイズを抑える。
 将来のハイブリッド・カー、電気自動車、燃料電池車とクルマが発展していくにつれて、モータの利用範囲はさらに多様化する。電動化における動力源として重要性はますます高まる。TDKのリング形状バリスタは小型モータのノイズを遮断するために使われている。
 

重要性が増すセンサによる計測情報

電子化が進むにつれて重要性が高まっているのが、センサとそこから得られる計測情報だ。車体のどの部分を駆動するにも、駆動した結果が計測できなければ、コントロールは完結しない。
 ひとつは温度センサ。クルマにはさまざまな温度センサが使われている。オイルの油温センサ、吸気系センサ・・・。これにはサーミスタと呼ばれる部品が使われる。特にエンジン制御系は温度が危険信号の役割をするので重要だ。TDKは、ここでも信頼性の高い製品を提供している。
 電子制御はクルマの高性能化と信頼性を支えてきた。エコロジー時代にもこの役割はいっそう重要性を増す。クルマと電子部品の親密な関係はさらに強まる。

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