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1. 急激に進むクルマの電装化

新車に乗り換えた人なら誰しも驚くのは、めざましい燃費の改善だろう。一昔前のクルマに比べて格段に向上している。それに加えて電動ユニットの数の多さ。注意深い人なら、キャビンの天井が随分柔らかくなっているのに気付くはず。ついでにクルマの各部に触ってみると、プラスチックの部品が多いのにも驚く。こういう"新発見"は、実は底辺ではみんなつながっている。

限りない軽さの追求がたどり着いた電装化

限りある地球の資源を効率的に使おう、そのために燃料の消費効率を上げよう。これが排ガス浄化の次に自動車業界が取り組んだ課題だ。そのためにはまずクルマの重さを軽くするのが先決。燃費改善の一番の早道は軽くすることにある。
 目標は単純だがやるべきことは無限にある。まずは車体を覆う鉄板を強度を保ったまま薄くすること。次はプラスチックに置き換えられる部分を探し出して非金属化する。車体の内部では特に重い油圧駆動系の電動化の可能性を検討する。駆動制御系では機械制御から電子制御に移行して機械系の軽量化に取り組む。次はあちこちに分散した電子制御ユニットの一元化によるユニット間配線の簡素化。
 こうした一連の動きは「エコロジー(燃費改善)」を起点とする「軽量化・電装化」の大きなムーブメントと言える。ここからさらに「ハイブリッド・カー」「燃料電池車」という将来像に向かって進もうとしている。現実的な普及時期がいつになるかは議論のあるところだが、「エコロジー」の視点がもはや無視できない以上、大きな青写真はすでに描かれていると見て差し支えないだろう。

人を乗せるゆえに求められる安全性・信頼性

クルマの活動範囲は酷暑から極寒まで

軽くて燃費が良いだけではりっぱなクルマとは言えない。大問題は「人が乗る機械」という点にある。これが他の一般消費者向け商品と異なるポイントだ。人が乗る以上、安全でなければならない。ブレーキが必要な時にちゃんと作動する、ハンドル操作がいつも思い通りになる、エンジンが急に止まらない、といったことは初歩的で、肝心なのはすべての運転機能が少なくとも数年の間、安定的動作することが保証されなければならない。
 したがってクルマに使われるさまざまな部品は信頼性が高くなければならない。一般商品の"信頼性"とは数段レベルが違う。まず屋外で雨風にさらされる。ちょっと極端だが、赤道上の砂漠を走ることもあれば、極北のブリザードの中を進むこともある。一般家庭の室内環境は平均して0℃〜30℃、最も高温の部分でもテレビのブラウン管のトランス部で80℃〜90℃くらいだ。これに対して自動車用部品の温度基準は-40℃〜150℃(エンジン部分を除く)と言われている。しかも水や振動に強くなければならない。

クルマの中もすでにネットワーク社会

150℃対応 X8R積層チップコンデンサ

世の中はブロードバンド・インターネット、無線LAN、携帯インターネットと、ネットワーク社会のまっただなかにある。あまり知られてはいないが、クルマの中にもネットワークはすでにある。CAN-BUSというネットワーク規格もあるくらいだ。
 クルマのネットワークは「電装化」と軌を一にして普及してきた。さまざまな電子制御ユニットやセンサー類、表示パネル、操作機器を相互に結ぶ目的で車内を何種類かのLANが走っている。LAN上で送受信される情報の危険度に応じて数種類の通信速度が定められている。安全性に関わる信号はその信頼性を満たす速度で送受信されている。十分に高速な通信で、安全面への配慮は怠りない。ブレーキを踏んでから3秒後に作動するというような危険な事態は起こらない。
 最近ではLANを含む通信配線を簡素化する目的で(これはワイヤー・ハーネスを軽量化する目的でもある)、電子制御ユニットをエンジンルーム内に集中化する傾向がある。このために電子制御ユニットの耐温度仕様やEMC特性(耐ノイズ性やノイズ抑止)が一層求められるようになっている。
 こんな広範囲にわたるカー・エレクトロニクスの世界にもTDKの高信頼性電子部品の活躍する舞台がある。

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