テクノ雑学
第113回 DLNAとは?録画したテレビ番組を家中どこでも楽しもう!
ハードディスクレコーダーやパソコンなど、私たちの家の中には録画データや音楽データを保存している機器が増えています。デジタル化されたさまざまなコンテンツのデータを、機器の設置場所に関係なく、見たい場所で楽しむための標準が「DLNAガイドライン」です。
ネットワークにつないで、どこでも見られる、聞ける
DLNA(Digital Living Network Alliance)は、家庭内LANを使ってAV機器、パソコン、情報家電などを接続し、連携して利用するためのガイドラインを策定している業界団体です。世界中の電器、通信、コンピュータ・情報機器関連業界の250社以上が参加しています。2003年に設立された「DHWG(Digital Home Working Group)」が前身となっており、2004年に現在の名称に変更されました。
DLNAで策定されたガイドラインに準拠した機器同士であれば、ネットワークで相互に接続して、画像、映像、音楽などのデータを、相互に利用することができます。例えば自室のパソコンに保存した写真データをリビングの大画面テレビで楽しんだり、リビングのハードディスクレコーダーに録画したテレビ番組の映像を寝室のテレビで見たりできます。コンテンツのデータがある場所を気にせず、見たい場所で再生できるのです。
接続は、IPネットワーク(コンピュータ同士の接続に利用するLANと同じネットワーク)上で、UPnP(Universal Plug and Play)という技術を利用して接続しており、特別なネットワーク設定をしなくても、相互に認識し、通信できる仕組みになっています。
DLNAの基本的な仕組みは、「サーバー機器」に保存されているデジタルコンテンツ(画像、映像、音楽など)のデータを、ネットワークで接続された「プレイヤー機器」で再生・表示するというものです。
サーバー機器として利用できるのは、パソコン、ハードディスクレコーダー、ネットワーク型ハードディスクなどです。パソコンをDLNAサーバーとして利用する場合は、DLNAサーバーソフトを起動しておく必要があります。OSがWindows XPかWindows Vistaであれば、Windows Media Player 11をDLNAサーバーソフトとして利用することもできます。
プレイヤー機器として利用できるのは、DLNA対応テレビ、ゲーム機、パソコンなどです。DNLAに対応していないテレビでも、「ネットワークメディアプレイヤー」という機器を接続することで、DLNA対応のテレビと同じように利用することができます。
ネットワークで接続されたサーバーとプレイヤーを起動すると、プレイヤーのリストの中にサーバー名が表示されます。再生したいコンテンツが保存されたサーバーを選び、リストの中から再生したいデータを選ぶと、プレイヤーで再生・表示されます。
手持ちのハードディスクレコーダー、DVDレコーダー、ブルーレイレコーダーなどがDLNA対応なら、テレビとレコーダーをネットワークで接続し、テレビをDLNAプレイヤーとして利用することで、テレビのリモコン操作でレコーダーを選択してコンテンツを再生できます。複数の録画機器を使い分けている人には、ちょっと便利な機能ですね。
2006年3月に発表されたDLNAガイドラインv1.5では、サーバー、プレイヤーに加えて、他の機器を操作する「コントローラー」、コンテンツの再生処理だけを行い、他の機器に表示用信号を送出する「レンダラー」、コンテンツを印刷する「プリンター」もDLNAの中で接続して扱えるようになりました。また、携帯ゲーム機、携帯音楽プレイヤー、カメラ付き携帯電話、デジタルカメラなどのモバイルデバイスにも対応するようになりました。
地上波デジタル放送の録画を楽しむ、ちょっとした注意点
注意点としては、接続した機器がDLNA対応でも、デジタルコンテンツのメディアフォーマット(ファイル形式)によっては、再生できない場合もあります。再生したいコンテンツのメディアフォーマットに、サーバーとプレイヤー双方が対応している必要があります。DLNAガイドラインv1.5で対応している動画、音声、静止画のメディアフォーマットを表にまとめました。
例えば静止画であれば、JPEG(Windowsのファイルで、拡張子が".jpg")の画像はDLNAガイドラインv1.5では対応必須となっているので、対応機器であれば問題なく再生できますが、PNG形式(Windowsのファイルで、拡張子が".png")の画像はオプションとなっているので、サーバーとプレイヤーのいずれかが対応していない場合、再生できないことがあります。
また、地上波デジタル放送の録画をDLNAで楽しむためには、利用するDLNA対応機器が全てDTCP-IP(地上波デジタルのコンテンツ保護機能に対応した伝送技術)をサポートしている必要があります。DLNAガイドラインv1.5ではDTCP-IP対応が必須となっていますが、ガイドラインv1.0準拠のハードウェアでは対応していない場合もありますので、注意が必要です。
携帯電話と連動して広がるDLNAの大きな潜在能力
DLNAは、ホームネットワーク(家庭内のネットワーク)の中で、保存されたコンテンツを利用するためのガイドラインです。「自宅のハードディスクレコーダーに録画してある番組を友達の家で見たい」といったニーズには応えられませんでした。
無線LAN対応の携帯電話を利用して、こうしたニーズに応える工夫が、2008年9月に開催されたCEATEC JAPAN 2008にNTTドコモが出展した「Mobile Home to Home(MH2H)」です。
無線LAN対応の携帯電話で外出先のDLNAネットワークに接続して、そのネットワーク上にあるDLNAプレイヤーに対して自宅のDLNAサーバーのコンテンツを再生するように指示を出します。同時にパケット通信で自宅のDLNAサーバーに接続し、インターネット経由のコンテンツの送出を許可します。
携帯電話が自宅外のDLNAプレイヤーと自宅のDLNAサーバー、両方のコントローラーとして動作することで、自宅のサーバーにあるコンテンツデータが送信され、外出先のプレイヤーで再生されるのです。現在のところ商用化の時期は未定とされていますが、DLNAの新たな可能性が感じられるサービスです。
また、2009年春には、録画予約機能やモバイルデバイスの同期機能が強化された新しいDLNAガイドラインv2.0が、3年ぶりに発行される予定です。例えば、携帯電話をコントローラーとして利用し、番組表を見ながら録画予約をする、といった操作が簡単にできるようになるでしょう。映像や音楽をもっと便利に楽しめる新しい仕組みに期待していきたいと思います。
著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける。
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」 (ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など
TDKは磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーです