テクノ雑学
第107回 スキャナーとは?紙をデータ化するその仕組みを解説
今年ももう残りわずか。年賀状作成のシーズンがやってきました。パソコンでオリジナルの年賀はがきをデザインする時、紙に書いたイラストや手書き文字を取り込むのに活躍するのがイメージスキャナです。今回のテクの雑学では、イメージスキャナの仕組みについてみてみましょう。
イメージスキャナとは何か
イメージスキャナとは、紙に描かれた絵や文字や写真などを読み取り、画像データとして取り込む(データをコンピュータに転送する)装置です。基本的な考え方は、取り込みたい原稿に細く光を当てて反射光の強さや色を測り、そのデータを合成して原稿全体の画像データを作成します。
取り込んだデータは、画像ファイルとして各種画像加工ソフトで加工できます。また、OCR(Optical Character Reader)というソフトを使うと、文字をイメージスキャナで取り込んだ画像をテキストデータに変換できます。新聞・雑誌の切り抜きや紙で配布された資料類をデジタルデータとして保存する時に便利です。
イメージスキャナからデータを取り込んだ画像データをプリンタで印刷すると、原稿のコピーが作成できます。つまり、コピー機の読み取り装置の部分だけを取り出した機能がイメージスキャナであるとも言えます。最近のコピー機には、取り込んだデータをメモリ上に保存して複数回出力する機能がついているものがありますが、同じことがイメージスキャナ+パソコン+プリンタでも可能です。
どのくらいの細かさでデータを取り込むかを決めるのが、「dpi」という数値であらわされる解像度です。dpiとは、dot per inchの略で、1インチの幅をいくつに分割してデータを取り込んでいるかを表します。dpiが大きくなれば、それだけ細かく画像を分割して取り込むことになり、精細な画像データになりますが、ファイルサイズは大きくなります。逆に、dpiが小さいと、ファイルサイズは小さくなりますが、画像の見た目が不鮮明になったり、ぎざぎざが出やすくなります。画像を取り込んでパソコンのディスプレイで見るときれいに見えるのに、印刷するとぼやけて見えるという失敗がよくありますが、これは画像を取り込む時のdpiが小さすぎるのが原因です。
つまり、原稿をスキャンする時に、使用目的に合わせたdpiを選ぶ必要があります。印刷用のデータであれば300〜400dpi、ホームページ用のデータであれば72〜96dpi、OCRの読み取り用であれば400〜600dpi程度が目安となります。最近の家庭用機種であれば十分に対応できる解像度なので、読み取りソフト側で用途に合わせた設定をします。
■ 原稿を読み取る2つの方式
家庭用に普及しているイメージスキャナは、原稿を平らな原稿台の上に固定してスキャンする「フラットベッド方式」と呼ばれる形式です。光源に白色光を用いて撮影にCCDを使う「CCD方式」と、光源にLEDを使用して撮影にCMOSイメージセンサを使う「CIS方式」があります。
CCD方式では、蛍光灯の光を原稿にあて、ミラーを使って反射光を収束レンズに送り、CCDイメージセンサで読み取る方式です。構造的に読取装置に一定の大きさが必要ですが、読み取り時間が比較的早く、また多少の凹凸がある原稿でも読み取れます。
CIS方式は、赤・緑・青の3色のLEDの光を切り替えながら原稿にあて、原稿に密着させたロッドアイレンズを通して、CMOSイメージセンサで光を読み取ります。LED・レンズ・センサが一体化しているので、本体のサイズは小さく、また省電力ですが、CCD方式に比べるとLEDを切り替えて読み取りをしている分、時間がややかかります。また、開いた本のように、読み取り面に密着できない原稿は読み取りが難しくなります。
これらのイメージスキャナは、紙などの不透明な原稿に光をあてて反射光を読み取る方式ですが、銀塩カメラのポジフィルムやネガフィルムを透過光でスキャンする「フィルムスキャナ」もあります。専用機の他、市販の家庭用イメージスキャナの多くには、原稿(フィルム)の裏側から光をあてる、フィルムスキャン用のオプションが用意されています。
立体のコピーが可能になる? 3Dスキャナと3Dプリンタ
イメージスキャナは、光を原稿にあてて、反射光を読み取りデータ化するものです。これと同じ発想で、光を立体の対象物にあてて、その反射光を読み取ることで、立体表面の形状をデータ化するのが、3Dスキャナです。
具体的には、レーザ光を対象物にあてて、光が戻ってくるまでの時間を測定して、表面の座標をデータ化し、形状を決定します。反射光の色を同時に読み取ることで、形状だけでなく色もデータ化する3Dスキャナもあります。
立体を「輪切り」にして表面の座標を読み取り、つなぎ合わせて、立体全体の表面を決定します。
測定した細い表面の座標データをつなぎ合わせて、立体全体の形状を再現します。カメラと併用することで、形状だけでなく色もデータ化する3Dスキャナもあります。
3次元スキャナは、図面どおりに製品が完成しているかどうかを調べたり、逆に立体から設計データに落とし込むようなリバースエンジニアリング、設計図が残っていない歴史的建造物をスキャンしてその構造を調べたり、空中から地表をスキャンすることで地形モデルをコンピュータに取り込むなど、幅広い用途に利用されています。
著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など
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