テクノ雑学

第39回 手のひらサイズの“テレビの未来” −「ワンセグ」を楽しもう!−

「ワンセグ」を楽しもう!

手のひらサイズの“テレビの未来” −「ワンセグ」を楽しもう!−

 最近、「ワンセグ」という言葉を時々耳にしますね。ワンセグとは、地上波デジタル放送のモバイル機器向け放送です。携帯電話などを使って、地上波デジタル放送の番組を楽しめます。
 

■ なぜ「ワンセグ」なの?

 地上波デジタル放送の規格である「ISDB-T」では、1つの局に割り当てられた6MHzの帯域を13個の帯域に分割し、各帯域ごとに搬送波の変調方式などを選択することで、複数の信号を1つの局から放送できるようにしています。この分割された1つ1つの帯域を「セグメント」と呼びます。

 家庭用のテレビで受信する地上波デジタル放送は、13のセグメントのうち12を使い、残り1つのセグメントをモバイル機器向けの放送に利用します。1つのセグメントを利用するので「1(ワン)セグメント放送」と呼ばれていましたが、2005年9月に、「ワンセグ」というサービス名称が正式に決定しました。

ワンセグ放送の電波

【 関連情報リンク】

■[D-pa] 社団法人 地上デジタル放送推進協会

 

■ どんな形の放送になるの?

ワンセグ放送の画面

 ワンセグでは、映像とデータを同時に放送します。映像は、320×240(QVGA)または320×180ピクセルで放送されます。映像と音声を合わせたビットレート(通信速度)は約312kbpsとなります。映像・音声と同時に放送されるデータは、数十bps程度の帯域です。携帯電話の画面では、上半分に映像、下半分にデータを表示します。

 従来のアナログ放送のテレビに比べると、デジタル放送のワンセグは、電波の受信状況にかかわらず安定した画質の映像を受信できるという特長があります。映像データの送信には、低いビットレートでの圧縮にすぐれた「H.264/AVC」を利用しています。iPodのビデオでも同じ規格を採用しています。将来は、iPodでもワンセグの映像が楽しめるようになるかもしれませんね。

 また、ワンセグでは、圧縮フォーマットでデータをそのまま送信しているので、録画も簡単にできます。現在発売中のワンセグ対応の携帯電話では、数十分程度の録画機能を搭載している機種もあります。
 

■ データ放送でより詳しくおもしろく

 ワンセグのデータ放送は、BML(broadcast markup language)で記述されたデータです。BMLは、Webサイトの記述に使うHTMLによく似た言語で、放送用に特化したものです。データ放送では、番組に関連するさまざまな情報が表示されます。例えばスポーツ中継であればそれまでの順位や選手の詳細データ、歌番組であればアーチスト情報といったものですね。

 BMLはデータを流すだけでなく、そこからリンクをはることもできます。これを利用するとさまざまな可能性が広がります。例えば、クイズ番組で、回答ボタンをBMLで作成しておくことで、番組を見ている人が携帯電話から回答を送信し、その結果をリアルタイムで集計してまたBMLで放送したり、歌番組で流れている曲の着メロダウンロードサイトへのリンクをはることもできます。リンクの機能を活用することで、見るだけでなく、番組に参加したり、買い物したりと、より楽しみが広がります。

 携帯電話の機能とデータ放送の連動も考えられます。例えば、携帯電話のGPSと組み合わせて、グルメ番組を放送しながら、現在地からもよりのお店の案内を表示するといった使い方も考えられます。また、スケジュール帳データと連動して、番組情報をスケジュール帳に付加するといったことも考えられます。さまざまな可能性がBMLにはあるのです。
 

■ いつから放送がはじまるの?

2006年4月にワンセグ放送が開始される放送局

 ワンセグの本放送開始は、2006年4月からの予定です。放送開始当初は、地上波デジタル放送と同じ内容の番組を同時に流す「サイマル放送」です。

 現在も、一部の局では、1日数時間の試験放送を実施しています。昨年末には、ワンセグ対応の携帯電話もいくつか発売されており、試験放送を楽しむことができます。この春発売予定のノートパソコンの新モデルには、ワンセグ対応のものもあります。

 「放送とネットワークの融合」が模索されていますが、ワンセグはモバイル端末というまさに手のひらにおさまるサイズで、放送とネットワークを完全に融合してしまったサービスです。これからの新しい放送とネットワークの行方を占うサービスとして、注目していきたいと思います。


著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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