テクノ雑学

第27回 雷対策は万全ですか? −瞬停と過電流からパソコンを守ろう−

瞬停と過電流からパソコンを守ろう

 梅雨もあけて、いよいよ夏本番。同時に、本格的な夕立と雷のシーズンの到来です。雷はアウトドアスポーツだけでなく、パソコンにとっても大敵。今回のテクの雑学では、パソコンの雷対策をとりあげてみました。

一瞬の停電もパソコンには命取り

 雷といえばまず思いつくのが停電です。完全に電気が消えて真っ暗になってしまう停電は、昔に比べると滅多に起こらなくなりましたが、ごく短時間、電圧が下がって電気の供給が切れる「瞬停」という現象は、意外と頻繁に発生しています。「カチッ」という音がして蛍光灯が点滅する現象に心当りがある方も多いのではないでしょうか。

 家庭用電器製品なら一時的に電源が切れても大した損害にはなりませんが、パソコンなどの情報機器では命取りになることがあります。作業中のデータが消えたり、運悪くハードディスクのアクセス中に瞬停が来ると、ディスクを破損し、最悪の場合はパソコンが起動しなくなることもあります。

 簡単にできる停電対策が、UPS(無停電電源装置)の導入です。UPSは、コンセントとパソコンの間にはさんで接続することで、停電時にはあらかじめ充電しておいた蓄電池から、パソコンに数分間給電します。瞬停であれば、UPSの蓄電池が残っているうちにコンセントからの給電が再開されるのでそのままパソコンが使用できますし、しばらく停電が続くようなら、UPSからの給電が続いている間に通常の手順でデータを保存しパソコンの電源を切ることで、損害を防ぐのです。

 UPSを選ぶ時のポイントは、給電容量、バックアップ時間、給電方式の3点です。給電容量は、接続したいパソコンやディスプレイのカタログに記載されている消費電力(W)を元に計算します。UPSのカタログには、給電容量としてVA(ボルトアンペア)単位の数値が記載されています。ワット単位の消費電力と、ボルトアンペア単位の給電容量の間には、
 

消費電力(W・ワット)=給電容量(VA・ボルトアンペア)×力率


という関係があります。力率とは、電気の利用効率のことで、実際には0.7程度の数値となります。したがって、UPSに必要な給電容量を求める式は、以下のようになります。
 

給電容量(VA・ボルトアンペア)=消費電力(W・ワット)÷ 0.7


実際には、バッテリーの劣化による給電容量の低下なども見込んで、この計算式で算出した数値の2倍程度の給電容量のものを選ぶのが安心です。

 バックアップ時間は、UPSのカタログに記載されています。同じ消費電力の機器を接続した場合、給電容量の大きなUPSほどバックアップ時間は長くなりますが、当然価格も高くなります。自分のパソコンを安全にシャットダウンするための作業時間を考慮して選びます。

 給電方式には、常時商用給電方式、ラインインタラクティブ給電方式、インバーター給電方式の3種類に分けられます。常時商用給電方式は、通常時はコンセントからの電力をそのままパソコンに出力しており、停電時にはバッテリーに切り替える方式であるのに対し、ラインインタラクティブ給電方式とインバーター給電方式は、通常時にもバッテリーとインバーター回路を通してパソコンに電力を出力する方式です。家庭用のパソコンの停電対策であれば、比較的安価な常時商用給電方式でも十分実用的です。

 家庭用のパソコンを数台接続する程度のUPSであれば、数万円程度で導入できます。大切なパソコンやデータを停電から守るために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 しかし、雷の怖さは、停電だけではありません。もう一つの脅威が、「過電流」であり、これはUPSだけでは防げないのです。

過電流って何?

 過電流とは、落雷によって一時的に電力線に大きな電流(サージ)が流れる現象です。

 落雷には、直撃雷と誘導雷の2種類があります。直撃雷は、一般的にイメージする落雷です。パソコンに直接雷が落ちてしまえば、ひとたまりもありません。どんな対策も無力です。雷が直撃するようなところでパソコンを使うのはやめましょう。

 誘導雷は、建物や電柱などに落雷することで、その付近に強い電磁界が生じる現象です。その電磁界の中に導線(電力線や電話線など)があると、電磁誘導現象による誘導電流が発生して、大きすぎる電流が流れます。この電流が、コンセントやモジュラージャックを通じて電子機器に流れると、機器が故障します。半導体を多く使った電子機器は電流の変化に弱いため、一般の家電製品は無事でもパソコンやモデム、ターミナルアダプターなどの電子機器は故障してしまいます。

過電流対策にサージプロテクター

過電流対策には、「サージプロテクター」を導入するのが手軽です。パソコンのコンセントや、モデムの電話線を、直接コンセントやモジュラージャックに接続せず、サージプロテクターを通して接続します。サージが流れてくると、サージプロテクターはその電流を機器の内部で放電させたり遮断することで、機器をサージから守ります。

 サージプロテクターは、仕組みによって、使い捨てのものや使用回数に制限があるものがあります。説明書をよく読んで、交換やメンテナンスを怠らないようにしましょう。

 もっとも、これらの対策は、コンセントや電話線にパソコンやモデムが接続されているから必要になるものです。雷がひどいな、と思ったら、パソコンの電源を切って、コンセントを抜いてしまうのが一番安全です。激しい夕立がきたら、コンピューターの前を離れて、他のことをしてみましょう。雨が止んだらそのまま散歩に出かけて、雨上がりの星空を楽しむのもまたいいものです。

【 関連情報リンク 】

■ウェザーニュース:発雷指数(雷予報)



著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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