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vol.5 150℃の高温タフネス設計 X8R積層セラミックチップコンデンサ

150℃の高温タフネス設計 

 

X8R積層セラミックチップコンデンサ 電子回路の基本パーツとして、コンデンサは、いまも進化を重ねている。 小型化、大容量化、高信頼化で世界をリードしてきた、TDKの積層セラミックチップコンデンサ。 車載用として脚光をあびているX8Rタイプは、高温タフネス設計により、150℃までカバーする。

高温タフネス設計

自動車の分野でも、電子制御技術の発達にともなって、多くのコンデンサが使われるようになってきている。電子部品に限らないが、車載用の部品には、非常に高度な信頼性が求められる。コンデンサの場合、基本特性はもとより、衝撃や振動に対する耐久性、高温下での耐熱性にも厳格でなくてはならない。それは家電製品に使われるコンデンサの比ではない。今回は、コンデンサの高温信頼性をテーマに解説したい。  

積層セラミックチップコンデンサは、使用温度環境によって、静電容量が変化しやすい。このため、ある温度範囲を設定して、その範囲内における静電容量の変化を、どこまで許容するかが決められている。たとえばX5Rという規格では、温度範囲-55〜+85℃において、静電容量の変化率が±15%と定められている。X7Rが、温度範囲-55〜+125℃(準高温領域)で、静電容量変化率±15%。今回とりあげたX8Rは、温度範囲がより高温領域まで広げられ、-55〜+150℃において、静電容量変化率が±15%である。TDK製品は、このX8R規格を余裕をもってクリアしている。積層セラミックチップコンデンサとしては、最高レベルのタフネス設計である。

高容量と高温耐久性の両立

積層セラミックチップコンデンサの高容量化と、温度特性とは相反する関係にある。高容量化するためには、高誘電率の誘電体、温度変化率を抑えるためには、低誘電率の誘電体を使わなければならない。一般に、高誘電率の材料にはチタン酸バリウム(BaTiO3)を用いるが、実はこの材料が、温度によって静電容量が変化しやすい性質をもっている。とくにある温度を超えると、結晶構造が変化して、誘電率が急激に低下する。この現象を、できる限り高温側にシフトさせる設計によって、温度特性を向上させるのである。  

また、積層セラミックチップコンデンサを高温・電界下に長時間おくと、やがては破壊してしまう。温度上昇によって、チタン酸バリウムの分子から酸素が失われ、これが構造欠陥となって、コンデンサを破壊してしまうのだ。したがって、静電容量が大きく、しかも温度特性がいいものを製品化するには、この難関を突破しなければならない。TDKでは、高度な材料組成技術を駆使。チタン酸バリウムに希土類化合物を添加することで、高容量と高温耐久性を両立させているのである。

高度な信頼性を確保

温度が高くなれば、コンデンサには大きな負荷がかかる。従来品とくらべて、X8Rにはどれくらいの負荷がかかるのだろうか。同じ電界下で信頼性難易度を比較すると、X7R(125℃保証)の60倍、X5R(85℃保証)では150,000倍にもなる。X8RとX7Rは25℃の違いでしかないが、同じ温度環境下においた場合、X7Rの寿命は60分の1ということだ。夏場では、自動車のエンジンルーム内が130℃にもなる。このような高温環境に使われても、ゆうに数10年は耐えられるという。  

X8Rのニーズが高まっている背景は、自動車の燃費向上と電子制御ユニットの最適制御にある。搭載数が増えている電子制御ユニット。しかし、ユニット間を結ぶワイヤハーネス(ケーブルの束)が増えて、車両重量は増加する傾向にある。そこで、ワイヤハーネスを削減するため、従来ダッシュボード下にあったエンジンコントロールユニット(ECU)は、エンジンルーム内に設置されるようになってきた。エンジンの近くで制御することで、制御の最適化もはかれるのだ。誘電体および端子電極材料からは鉛を排除し、環境に配慮している。X8Rの自動車以外の用途としては、高温度条件で使われる精密測定機器や、ボール型蛍光灯などが考えられている。現在、製品ラインアップは1608、2012、3216の3タイプ。今後は、1005タイプ、3225タイプを開発し、さらなる小型化と高容量化をねらっている。コンデンサ市場の熱い戦い。TDKがその先陣を切る。

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