テクノ雑学

第61回 もっともっと美しく −映像端子を知ろう−

 地上波デジタル放送対応のためにテレビの購入を検討している人が増えています。機種を検討する時にチェックすべき重要な項目が、映像端子。ハードディスクレコーダやDVDレコーダ、次世代ゲーム機など、テレビに接続する機器がどんどん増えてきます。新年最初のテクの雑学では、映像端子の規格についてみていきましょう。

D端子ができるまで

 少し前まで、家庭用ビデオデッキの接続用ケーブルとしてよく利用されていたのが、赤白黄の3つのピンプラグが束ねられたケーブルです。赤は右音声、白は左音声、黄色は映像用の端子に接続します。
 この黄色いピンプラグを接続しているのが、「コンポジット端子」です。このケーブルで伝送される信号は、映像の明暗をあらわす輝度(Y)と色成分(C)の2つです。1本のケーブルなので接続が簡単という特徴がありますが、1本のケーブルで全ての信号を伝送するため、映像はあまり美しくありません。

コンポジット端子、ケーブル


 映像を美しくするには、映像信号の成分を別々のケーブルで送るようにすることで、信号の干渉を防ぐ方法が簡単です。映像信号をY(輝度)、U(青の色差)、V(赤の色差)の3つに分解して、別々のケーブルで伝送するようにしたのが、「コンポーネント端子」です。
 

コンポーネント端子、ケーブル


 コンポーネント端子は、コンポジット端子に比べて映像が綺麗ですが、映像だけで3つの端子が必要で、接続が煩雑になるという短所がありました。そこで、コンポーネントケーブルの接続をもっと簡単にするために作られた規格が、現在主流になっている「D端子」です。一見、1本のケーブルに見えますが、中身は複数のケーブルを束ねており、YUVそれぞれの信号を別々のケーブルで伝送しています。
 

D端子、ケーブル


 D端子の名前は、端子の形がアルファベットのD型であることに由来しています。Dといえば「Digital」のDだと思いがちですが、D端子ケーブルで伝送されているのはアナログ信号なのです。

D端子の種類

 最近のテレビの映像端子はD端子が主流になっています。D1、D2、D3、D4、D5などの番号がついていますが、これは対応している映像フォーマットを表しています。

D端子と対応映像フォーマット


 映像フォーマットの数字は走査線の数、iはインターレース方式、pはプログレッシブ方式をあらわしています。表の右側ほど高品質な映像になると考えてよいでしょう。とはいっても、接続する機器によって対応する端子が異なるので、購入する際にはよく確認しましょう。
 最新のテレビでは、全てのフォーマットに対応したD5端子が主流になっていますが、現行のデジタルハイビジョン放送への対応はD4端子で可能になっています。

デジタル信号をそのまま送れるHDMI

 ここまでに紹介した端子は、全て、映像信号をアナログで送る端子ですが、映像信号をデジタルでそのまま伝送できる、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子に対応したテレビも徐々に増えてきました。HDMI端子は、映像だけでなく、音声や制御信号なども1本のケーブルで伝送できます。

HDMI端子、ケーブル


 デジタル信号は、アナログ信号に比べて、ノイズの影響を受けにくいため、色のにじみなどが発生しにくいという特長があります。Xbox360やPlayStation3などの次世代ゲーム機では、HDMI接続することで、驚くほど繊細な画像でゲームやDVDを楽しむことができます。

著作権保護と端子の関係

 高画質映像を扱う時に問題になるのが、著作権です。コピーのたびに必ず画像の劣化が起こるアナログ映像と異なり、デジタル映像はオリジナルと全く同じ品質の映像がコピーできます。HDMIはその点についても配慮されており、HDCP(High-Bandwidth Digital Content Protection)というコピー保護機能が実装されています。

 一方、既に普及しているD端子では、このような制御ができません。そのため、ブルーレイディスクやHD DVDなどの新しい規格では、ハイビジョン映像がそのままコピーできないようにするために、D端子にはハイビジョン映像をそのまま出力しないという規制をかけることが検討されました。

 しかし、現状広く普及しているD端子搭載のテレビで、ハイビジョンがそのまま楽しめないのでは、ソフトやプレーヤの普及の妨げになります。そういう理由で、当面は規制をせずにソフトが販売されていますが、2011年に再度見直しが図られることになっています。つまり、2011年以降に発売されるブルーレイディスクやHD DVDの映像ソフトをハイビジョンで楽しむためには、HDMI端子が必要になる可能性があります(規制の見直しが予定されているだけで、決定事項ではありません)。

 今後のテレビと周辺機器の接続は、D端子からHDMI端子に移行していくことが予想されています。これからテレビを購入するのであれば、D端子だけでなく、長い目で見て、HDMI端子搭載の機種を選ぶのがおすすめです。


著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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