なるほどノイズ(EMC)入門

【実践編⑦】DVD/Blu-rayレコーダのEMC対策

DVD/Blu-rayレコーダなどのAV機器には、HDMI端子が標準搭載されています。HDMIはハイビジョンの映像信号とオーディオ信号を非圧縮のまま伝送できる高速デジタルインタフェース。DVD/Blu-rayレコーダとデジタルテレビなどを1本のケーブルで簡単接続できるのも便利です。しかし、大容量のデジタル情報を高速伝送するため、SI(シグナル・インテグリティ=信号品質)の要求はより厳しさを増しています。

デジタル機器の高速化・大容量化を牽引する差動伝送方式

DVD/Blu-rayレコーダはHDD(ハードディスクドライブ)を内蔵したタイプが主流。気に入った番組は大容量のHDDにどんどん録画しておき、残しておきたい映像はDVDに移して保管しておくというスタイルが定着しつつあります。
デジタルテレビとDVDレコーダの双方にHDMI(High Definition Multimedia Interface/ 高品位マルチメディア・インタフェース)端子が搭載されていれば、専用ケーブル(HDMIケーブル)1本で、大容量のデジタルハイビジョン映像も非圧縮のまま伝送可能となり、HDDにはそのまま録画可能です。HDMIは差動伝送方式の高速デジタルインタフェースで、位相が180°異なる2つの信号を用いた2線式の伝送方式です。HDMIばかりでなく、USB、IEEE1394など、デジタル機器を結ぶインタフェースとして広く利用されています。
差動伝送方式は原理的に外来ノイズに強く、ノイズを出さないのが特長といわれます。しかし、現実には2つの信号のわずかなアンバランスによってもコモンモードノイズ電流が生まれ、インタフェースケーブルなどからコモンモードノイズを放射します。また、パソコン内蔵のHDD同様に、DVD/Blu-rayレコーダ内蔵のHDDにも、大容量化と高速化への対応のため、差動伝送方式のシリアルATA(SATA)が採用されるようになっており、ここでもコモンモードノイズが発生します。そこで不可欠となっているのがコモンモードフィルタ。ますます高速化しつつある差動伝送方式のインタフェースにおいて、そのノイズ対策はチップビーズやLCフィルタでは不十分。根本的な解決はコモンモードフィルタしかないといって過言ではありません。

信号波形を歪ませることなくノイズを抑制するHDMI用コモンモードフィルタ

TDKのHDMI用コモンモードフィルタには、単にノイズを低減するだけでなく、信号波形をきれいにして正しく伝送する効果があります。デジタル信号のパルス波形は、基本波とその整数倍の高調波の集まりです。高調波成分は放射ノイズの原因となるため、基本波の5〜7次の高調波を超える成分はフィルタによってカットする必要があります。これは基本波と5〜7次の高調波成分のみでも信号波形はほぼ保たれるからです。たとえば、伝送に使用される周波数が800MHzの場合、その7次高調波は5.6GHzになります。これは5.6GHzという広い帯域で、コモンモードノイズのみを抑制する特性をもつノイズフィルタが求められることを意味します。カットオフ周波数が5.6GHzよりも低いと、ディファレンシャルモードの信号を減衰させてしまうからです。
TDKのHDMI用コモンモードフィルタ(ACM2012Hシリーズ)は、巻線間隔をミクロンオーダーで精密制御するなどの高度技術を投入、カットオフ周波数をいっきに6GHzにまで拡大した先進のノイズ対策部品。これにより、超高速のデータ伝送とともに、すぐれた放射ノイズ抑制と、歪みのない信号波形の伝送を実現します。

HDMIは機器の相互接続性を保証するために、ケーブル、コネクタの形状、配線などインタフェース(これを物理層といいます)の厳格なコンプライアンス・テスト(認証試験)が規定されていて、このテストに合格しないとHDMI機器として認められません。挿入によって信号波形に歪みが生じるようなフィルタは、いかにノイズ除去効果があっても不適格です。その重要な評価方法の1つとなっているのがアイ(EYE)パターンです。さまざまなビットパターンの信号を送ったときでも、差動信号のハイとローがきっちり保たれるかを調べるテストで、オシロスコープに映し出される波形と六角形のマスクパターンが、目(EYE)に似ているのでアイパターンと呼ばれます。波形がマスクパターンにわずかでも重なると不適合となります。TDKのHDMI用コモンモードフィルタは6GHzまでの周波数帯域をカバーするため、挿入しても初期状態とほぼ同等の伝送波形品質を保ち、アイパターン・テストも余裕をもってクリアします。

スキュー補正効果と特性インピーダンス補正効果もあわせもつ

TDKのHDMI用コモンモードフィルタの大きな特長は、放射ノイズの低減と信号波形の正しい伝送のみならず、すぐれたスキュー補正効果もあわせもつことにあります。差動伝送の信号はハイとローが対称になって揃うのが理想ですが、実際にはICの出力特性、伝送ラインの長さの違いなどにより、波形の立ち上がり・立ち下がりのタイミングのズレ、振幅やパルス幅の違いなどが現れ、スキュー(Skew)と呼ばれる不平衡成分を発生して、コモンモードノイズの原因となります。TDKのHDMI用コモンモードフィルタは、信号波形の微妙なアンバランスを元に戻すすぐれたスキュー補正効果を発揮します。
また、HDMIのコンプライアンス・テストの規定の1つにTDR(時間軸反射測定法)があります。周波数が数百kHz以上の高周波信号においては、配線やケーブルなどの伝送路は、特性インピーダンスが規制されています。しかし回路図にはない微小な浮遊容量(コンデンサ成分)や自己インダクタンス(コイル成分)により、特性インピーダンスが規格値から外れると不整合になり、信号を反射させて信号波形を歪ませるため、高速伝送が達成されなくなってしまいます。TDKのHDMI用コモンモードフィルタは100Ωに整合されたすぐれた特性インピーダンスをもつために、少々のインピーダンス不整合も平坦化して反射を起こしません。SI(シグナル・インテグリティ)が重要視されてくると、差動伝送ラインにおいてはコモンモードフィルタが唯一のノイズ対策部品となります。4K、8Kスーパーハイビジョンなど、高品位・高精細のAVライフにおいて、HDMI用コモンモードフィルタがいかに重要なノイズ対策部品となっているかがおわかりいただけるでしょう。

TDKはHDMI用はじめ、各種高速差動インタフェース用コモンモードフィルタを豊富にラインアップしています。詳しくは、TDKプロダクトセンター「信号ライン用コモンモードフィルタ/チョーク セレクションガイド」をご参照ください。
https://product.tdk.com/info/ja/products/emc/emc/cmf_cmc/technote/cmf-selection-guide.html

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