エレクトロニクス入門

コンデンサ編 No.3 「セラミックコンデンサ②」

積層セラミックチップコンデンサの主な特性

積層セラミックチップコンデンサの主な特性

コンデンサを正しく使用するには、コンデンサの特性を知る必要があります。ここでは積層セラミックチップコンデンサの特性の主要なものについて概説します。

●定格電圧

コンデンサに印可できる電圧には上限があります。コンデンサに定常的に印可して使用可能な最大電圧を定格電圧といいます。定格電圧は一般に直流電圧で示されますが、交流耐圧が保証された製品もあります。

●漏れ電流(リーク電流)/絶縁抵抗/絶縁破壊

コンデンサは直流を遮断するとはいえ、わずかながら漏れ電流が発生します。コンデンサに加えた電圧をコンデンサに流れる電流で割った値を絶縁抵抗値といいます。積層セラミックチップコンデンサは絶縁抵抗値が高く、一般的な用途では、漏れ電流は問題になりません。しかし、定格電圧を超え、さらに印可する電圧を上げていくと、コンデンサはついには絶縁破壊を起こします。

●tanδ (タンジェント・デルタ)・Q (キュー)

理想的には回路上でコンデンサ内部でのエネルギー消費はありませんが、実際にはコンデンサの誘電損失、電極やリード線の抵抗成分(ESR:等価直列抵抗)によるエネルギー損失が発生します。これはコンデンサに流れる電流の位相ずれとして表れます。コンデンサに加えられた電圧と電流の位相差は理想的には90°ですが、前述した損失により90°から遅れてきます。この遅れの角度(損失角)δを三角関数のtan(正接)で表したものを、tanδ (タンジェントデルタ)あるいは誘電正接といいます。また、tanδの逆数をQ(品質係数)といい、高周波領域におけるコンデンサの性能を示す指標として用いられます。

●静電容量の温度特性

電子機器に多用される積層セラミックチップコンデンサは、誘電体の種類により低誘電率系(種類1)と高誘電率系(種類2)に大別され、さらに温度特性によって細かく分類されています。温度特性はJIS(日本工業規格)やEIA(米国電子工業会)規格によって定められています。

●DCバイアス特性(直流電圧特性)

セラミックコンデンサの静電容量は、印可される電圧によっても変化し、直流電圧においてはDCバイアス特性と呼ばれます。静電容量の変化は低誘電率系(種類1)ではほとんどみられませんが、高誘電率系(種類2)のB特性や、特にF特性のセラミックコンデンサにおいて顕著に表れます。これは高誘電率系は自発分極している強誘電体(BaTiO3など)を使用していることに起因します。
セラミックスは多数の結晶粒(グレイン)からなる多結晶体です。強誘電体においては結晶粒の分域(ドメイン)の自発分極は互い違いに向いて打ち消し合い、全体として自発分極は示しません。しかし、印可される直流電界の強度が高まっていくと、当初は自発分極の向きが電界の向きに整列して誘電率が大きくなりますが、さらに電界を高めていくと、整列を終えて飽和状態に達し、誘電率は低下してしまいます。このため、DCバイアスを加える場合は、誘電体の特性や使用電圧・耐圧を考慮に入れて選択する必要があります。また、小型サイズのコンデンサほど、DCバイアスによる静電容量の減少が大きくなる傾向があります。

●インピーダンス-周波数特性

コンデンサは周波数の高い交流ほど通しやすい性質があります。理想的なコンデンサは周波数が高くなるにつれ、かぎりなくインピーダンスはゼロに近づきますが、現実のコンデンサでは、ある周波数を境にインピーダンスは上昇します。このため、インピーダンス-周波数特性はV字型(あるいはU字型)のカーブを描きます。

これはコンデンサがもつESL(等価直列インダクタンス)により、コンデンサとの間でLC 共振回路を形成することによるものです。V字カーブの底にあたる周波数のことを自己共振周波数(SRF) といい、この周波数まではコンデンサとして機能しますが、それ以上の周波数領域ではインダクタとして機能してしまいます。また、Q 値も自己共振周波数ではゼロとなってしまいます。したがって、コンデンサは自己共振周波数以下で機能するように選択する必要があります。

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