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MONO-COTO INNOVATION 2020
開催レポート
全国の中学生・高校生が「モノづくり」「コトづくり」の創造力を競い合うコンテスト「MONO-COTO INNOVATION 2020」が開催されました。この記事では、初めてオンラインでの開催となったイベントの様子をレポートします。
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ABOUT
MONO-COTO INNOVATIONとは?
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「自ら考え、価値を創造する人を育む」をテーマに、中高生が創造力を競い合う舞台として株式会社Curio Schoolが2015年にスタートしたイベント。これまでにのべ1,000人もの中高生が参加してきました。TDKでは社会の様々な課題に対して、「モノづくり」と「コトづくり」を通じて解決に取り組むMONO-COTO INNOVATIONの理念に共感し、2018年よりイベントをサポートしています。
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REPORT
「コロナにおける困りごと」を解決するアイデアを競う
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社会のさまざまな課題を解決するためのアイデアを競い合うイベント「MONO-COTO INNOVATION」。2020年のテーマは、「Withコロナにおける困りごとを解決するモノコト」です。私たちの生活や社会を大きく変えるきっかけとなった、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大。現在、世界中の大人たちがコロナ禍におけるさまざまな課題解決に取り組んでいるなか、中高生はどんなことに注目し、どんな新しいアイデアを生み出すのでしょうか?
海外からの参加者も含め、事前選考を通過した96人の中高生たちが参加した今年のイベント。4人一組のチームとなって、期間中の3日間でこれまでにない「モノづくり」や「コトづくり」にチャレンジします。初めてのオンライン開催となった今大会。リモートで初めて出会うメンバーたちがチームワークを発揮することができるのか、参加者がひとつの大会として一体感を感じることができるのか。大会主催者にとっても初めてのチャレンジとなりました。
主催者の声
開催前は、そもそもオンラインで議論ができるのか、参加者の横のつながりが生まれるかが心配でした。しかし、やってみると中高生の皆さんは、オンラインホワイトボードやビデオ会議システムなどのツールをすぐに使いこなせていました。また、メインのセッションが終わった後、オンライン懇親会を行ったところ、リアルでは声をかけづらい場面でも、オンラインだと学年や年齢も関係なく話ができたので雑談が生まれやすく、横のつながりにおいても、リアルに比べて遜色ない形でできたかなと思っています。
株式会社Curio School代表
西山恵太さん
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「デザイン思考」について学び、実践する
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大会1日目は、ユーザーの行動や気持ちを洞察して課題を発見し、モノづくりやコトづくりに活かす「デザイン思考」についてのワークショップを開催しました。チームメンバーはこの日初めて顔を合わせたばかり。打ち解けるのに緊張する参加者もいるなか、早速各チームはアイデアを出したり、意見をぶつけたりと、白熱したディスカッションを展開しました。
「これまでの経験から、実際にモノづくりに入ったほうが仲良くなって、ディスカッションができることがわかりましたので、早くワークに入ることを狙いました。また、お昼ごはんの時間もテレビ会議をつないで、雑談しながら食べることでチームが打ち解けるような仕掛けを用意しました」。
(西山さん)
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オンラインホワイトボードなどのツールを利用し、
チームメンバーと活発な議論が行われました。
2日目と3日目には、実際にテーマに沿ったアイデアについて議論を進めていきます。朝10:00に集合し、昼食を挟んで18:00まで各チームでじっくりと打ち合わせやプロトタイプの作成、アイデアのブラッシュアップなどを行いました。オンラインでのこうした議論に慣れておらず、戸惑った参加者もいたようです。「初めは緊張しましたが、メンバーがすごく話を真剣に聞きあい、受け止め、発展していく感じで、熱中しているうちに打ち解けられました」(入山璃暖さん・高1)。「画面越しに相手が考えたアイデアを想像するのが大変でした。でも、オンラインは集まるハードルが低く、結果的にアイデアのブラッシュアップや議論に多くの時間が割けたのでよかったです」(細川美咲さん・高1)。
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バーチャルキャラクターとの会話を通じて、
チームメンバー同士のコミュニケーションをうながす取り組みも。
3日間の期間中、参加者たちはオンラインツールを活用しながら、ユーザーニーズの検証や課題解決のアイデアを整理していきます。その後各チームは、プレゼンテーション用のムービーを制作。「アイデアのユニークさ」、「プロトタイプの確からしさ」、「社会的インパクト」といった基準で予選審査が行われました。その結果、参加24チーム中8チームの決勝大会進出が決定。約1週間後の最終プレゼンテーションへの参加を勝ち取りました。
VOICES
MONO-COTO INNOVATIONに
参加して感じたことは?
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コロナ禍で外出ができないなか、新たなことに挑戦したいと考え、参加を決めました
学校ではクラスメイトや先生といった身近な人にしか視点が向いておらず、勉強というベクトルのみで動いていまいした。しかし、モノコトでは、たくさんの考え方、見方を持っている人たちを知り、自分の視野を広くしていきたいと思いました
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緊張しやすく、知らない人とコミュニケーションを取ることが苦手でしたが、モノづくりや考えることが好きで、何かしらの自信がつくのではないかと期待して参加しました
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FINAL PRESENTATION
8チームによる最終プレゼンテーションが開催
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決勝進出を決めた8チームは、約1週間後の最終審査に向けて、企画のさらなるブラッシュアップやプレゼンテーションの準備を行います。「毎日、日付が変わるぐらいまでみんなで起きて、みんな眠気で限界になりながらやっていました」(清水優里恵さん・高2)。
そして迎えた2020年8月30日。決勝の舞台に挑む8チーム32人のメンバーが、これまで磨き上げてきた自分たちの企画、「Withコロナにおける課題を解決するモノコト」のプレゼンテーションを行いました。コミュニケーションの課題を解決するためのSNSや、オンラインで旅行を楽しめるサービス、熱中症を予防するためのウェアラブルデバイスなど、ソフトウェアからハードウェアまで多彩なアイデアが発表されました。
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スライドを使ったプレゼンテーションでは、課題やユーザーインサイト、独自にリサーチしたデータなどを交え、自分たちのアイデアの特長を伝えていきます。発表をバトンタッチしたり、ユーザーを演じてみたりしながら、工夫を凝らしてプレゼンテーションを行う各チーム。発表後の審査員の質問も、「本当に実現できるのか」「他に似たようなアイデアはないのか」「そのネーミングに込められた想いは何か」など、本質に迫る鋭い質問が飛び交います。しかし、各チームそれらに臆することなく、堂々と回答していきます。それは、自分たちのアイデアを時間をかけて検証し、細部まで深く掘り下げて考えてきた証。
今回の優勝チーム「考える乙女たち」も、アイデアの検証を徹底的に繰り返したと話します。「一度アイデアを考えたあと、それについて考察を深めて、それで間違っていたらもう一度利用シーンに戻って考え直す、というのを何度も繰り返した結果、だんだんコアに近づいていきました」
(横山紗衣さん・高2)
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ストレスのたまらない「やさしいSNS」が1位に
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審査の結果1位に選ばれたのは、コロナ禍でストレスのたまりやすいコミュニケーションの課題を解決する、やさしいSNS『fuwari_』を企画した「考える乙女たち」チーム。メンバーのひとりを仮想ユーザーとして想定し、そのメンバーの意見や願望にとにかく忠実に応えるサービスとしてアイデアを磨きました。「この案は当初ボツになりかけたのですが、メンバーの熱の入り方がこれだけ別格だったので最終の企画としました」とメンバーの細川さんは振り返ります。「この案で本当にユーザーの悩みは解決されるのか、最終日の前日深夜まで話し合い、プレゼンテーションに望みました」。(細川美咲さん・高1)
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2位には初対面の人と気軽に交流できるアプリを提案した「ウィズリーチ」チームが、3位には友人と気軽にコミュニケーションができるオンライン動画共有アプリを提案した「とうもころし」チームがそれぞれ選ばれました。
オンラインでの開催を終え、次回に向けて
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参加者の中には、コロナ禍における日々の変化として、学校やクラブ活動で友人と会う時間が制限されたことを挙げる人も多く、今大会では、オンラインでのコミュニケーションの課題を解決するアイデアが上位を占めました。MONO-COTO INNOVATION 2020を終えて、主催者の西山さんは大会について次のように総括します。「今回、オンラインでのディスカッションが想像以上に上手くいった一方、モノづくりにとって大切な『プロトタイプ』をどこまで作れるか、どのように確かめられるかに関しては、リアルと比べてやや難しいところがありました。次回からはリアルとオンラインの両者の良さを組み合わせたイベントにしたいと思います」。
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中高生ならではの経験と実感に基づいた課題発見と、常識にとらわれないフレッシュなアイデアに、審査員の中村友香さんは、「ものすごく面白くて、考え抜かれたアイデアばかりで、あっと言う間に時間が過ぎました」と話しました。
2020年の夏、仲間とともにモノづくりやコトづくりに取り組むことの楽しさや面白さ、そして難しさを体験した中高生たち。この中から、未来を大きく変えるモノ、コトをつくる人が出てくるかも知れません。
VOICES
MONO-COTO INNOVATIONに
参加して感じたことは?
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イベントが終わってから、身の回りにあるもののデザインや機能に対して、疑問に思ったり、感心したりする機会が増えました。そういった目を持ちながら、また新たなモノづくりやコトづくりに挑戦したいです
メンバーがそれぞれ得意な分野を担当し、最終的にいいプレゼンができました。最終日にはオンラインでしか会ったことがないことを忘れるくらいメンバーと仲良くなれました
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アイデア出し、意見の伝え方、プレゼン、インタビューなどチームメンバーがうまくやっている方法を何十回も見られたことで、いろいろな場面で参考にできると思いました
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審査員コメント